M
2023 PRIZE
応募者のMさんは、日本の有名な歌人の紀友則の作品「久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ」(※)にインスピレーションを得たアイディアを発表。桜の花びらに和歌を印刷するという、独創的で若々しい発想をしました。日本古来の文化である1000年以上前の和歌が、21世紀の新しい技術であるSPECIAL FLOWERと融合して、次世代に継承すべき新しい価値観を提供します。和歌の形式は、一般に「5、7、5、7、7」と呼ばれる5句から成ります。桜の花弁は5つです。和歌の形式と、桜の花びらの数が一致している愛らしい偶然に着目した、完璧な域にまで洗練されたアイディアをご覧ください。桜の雰囲気に合わせて、光に透かした際に桜にほんのりと色味が足され、 華やかさが増すようにデザインされています。
実際に桜に印刷した様子は、2024年春にSPECIAL FLOWER COMPANYで発表されました。
※ English Translation: Cherry Blossoms, on this calm, lambent day of spring, why do you scatter with such unquiet hearts? , "One Hundred Poets, One Poem Each: A Translation of the Ogura Hyakunin Isshu", Peter McMillan, 2010
Mさんは、アルコールインクアートにインスピレーションを得て、四季の一連の作品も発表されています。アルコールインクアートは、アルコールインクを垂らして模様を描く技法です。随筆『枕草子』の作中にある、「春はあけぼの」、「夏は夜」、「秋は夕暮れ」、「冬はつとめて」からインスピレーションを得ました。四季の色取り取りのアルコールインクアートを、白いバラに印刷します。
「枕草子とアルコールインクアートで、和洋折衷を表現した」と、Mさんは説明します。白い花に様々な着色を施すことで、SPECIAL FLOWER®️の印刷技術がもつ可能性の多様性を表現しています。アルコールインクアートを選んだ理由は、バラの華やかさに負けない素材であるからです。
それぞれの季節の絵柄について、Mさんは、以下の説明を加えています。
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春の夜明けを想起させる薄桃・薄紫のグラデーションを使用。インクの広がりは桜の花びらを模しています。
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夏の月夜を想起させる紺・水・黄を使用。金のインクのはねは蛍の光を模しています。
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秋の夕暮れを感じさせる橙・濃茶・黄を選択。細かく広がるインクはススキを表現しています。
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雪の降り積もる冬の早朝を連想させる白・灰を使用。銀のインクは雪の結晶を模しています。
実際にバラに印刷した様子は、2024年春にSPECIAL FLOWER COMPANYで発表されました。