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商標登録の出願プロセス完全ガイド!侵害対策や失敗を避ける方法は?

公開日 2026年10月22日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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商標登録は、調べる→出す→審査を待つ→登録料を払うの4段階です。全体でおおむね6〜10か月かかります。

ただし、この4段階のどこで失敗するかは、最初の1段階でほぼ決まります。商標そのものより、「どの商品・サービスで取るか」を外すほうが、はるかに多い失敗です。権利は取れたのに、自社が本当に守りたい範囲に届いていない、ということが起きます。

この記事では、出願プロセスを順に追いながら、各段階で実際に何が起きるか、費用がいついくら出ていくか、そして登録後に侵害されたとき・されそうなときに何ができるかまでを通して説明します。

この記事でわかること
  • 出願から登録までの4段階と、それぞれにかかる期間
  • 特許庁に払う費用が、いつ・いくら発生するか(10年分と5年分の違いも)
  • 区分の決め方を外すと、権利がどう届かなくなるか
  • 拒絶理由通知が来たときに取れる手と、その期限
  • 登録後の侵害対策(警告・差止め・損害賠償)と、逆に警告された場合
  • 自分で出すか、弁理士に頼むかの判断基準
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

商標登録の全体像 ── 4段階と期間

まず全体を1枚で押さえてください。

段階やること目安期間特許庁への費用
① 調査先行する商標がないかJ-PlatPatで調べる数時間〜数日無料
② 出願商標登録願を提出する即日3,400円+8,600円×区分数
③ 審査特許庁の審査を待つ。拒絶理由通知が来たら応答する5〜10か月0円(応答は別途)
④ 登録登録査定後、30日以内に登録料を納付納付後2〜3週間で登録32,900円×区分数(10年分)

いちばん長いのは③の審査待ちです。2024年6月時点で、出願から審査結果の通知まで約5〜10か月かかっています。この間、こちらからできることはほとんどありません。だからこそ、①と②で決めたことが、そのまま結果になります。

急ぐ事情があるなら、早期審査を使うと1〜3か月で審査結果が来ます。要件は後述します。

① 調査 ── ここで決まる

出願の前に、同じ商標・似た商標が先に出されていないかを調べます。J-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で無料でできます。

調べる順序

  1. 使う予定の商品・サービスを、日本語でそのまま書き出す
  2. 「商品・役務名検索」で、その名前から類似群コードを引く
  3. 「商標検索」の称呼(類似検索)に、生じ得る読み方を全角カタカナで1つずつ入れる
  4. 2で引いた類似群コードで絞り込む
  5. ヒットしたもののステータスを見て、生きている権利だけを残す

「読み方」は1つではありません

称呼(類似検索)は、読み方の似た商標を拾ってくれます。ただし入力した読み方の分しか拾いません。1つの商標から生じる読み方は1つとは限らないので、考えられる読みを全部入れてください。ここを1通りで済ませる方が非常に多い。

直近2か月弱の出願は見えません

出願された商標が称呼検索でヒットするようになるまでには、出願から6〜7週間かかります。今日調べて何も出てこなくても、直近1か月半〜2か月の出願は見えていません。商標は先に出願した人が優先されます(先願主義)から、調べ終わったら、間を空けずに出すことが実質的な対策になります。

願書の書き方まで進むなら
書影

調査ができたら、次は願書です。商標登録願の様式と記入例は、株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)に収められています。

本記事に対応するのは第3編 第2章 第4 商標(1)商標登録願です。(ii)効率的な書類を書く準備、(iii)商標の決定、(iv)「商品及び役務の区分」と「指定商品・指定役務」の決定、(v)様式、(vi)例、という順で、そのまま書き進められる構成になっています。手続補正書と意見書の記載例も、同章(5)(6)にあります。

② 出願 ── 区分と指定商品・指定役務を決める

出願書類は「商標登録願」1通です。A4縦で、記載すべきことは決まっています。

記載項目書く内容
【書類名】商標登録願
【整理番号】自分で付ける管理番号
【提出日】郵送なら投函日、持参なら持参日
【あて先】特許庁長官 殿
【商標登録を受けようとする商標】8cm四方の枠内に商標を記載(最大15cmまで拡大可)
【指定商品又は指定役務並びに商品及び役務の区分】区分と、その区分で使う商品・サービス名
【商標登録出願人】識別番号・住所・氏名(名称)

費用は区分の数で決まります

出願料は3,400円+(8,600円×区分数)です。1区分なら12,000円、3区分なら29,200円になります。

ここがいちばん多い失敗

「商標は通ったが、守りたい範囲が入っていなかった」という失敗が、実務では最も多い。たとえばコーヒー豆を売り、あわせて喫茶店も開くなら、豆は第30類、喫茶店の営業は第43類です。第30類だけで出願すると、同じ名前で喫茶店を開く他社を止められません。

逆に、売る予定のない商品まで区分を広げると、その分の出願料と登録料が無駄になります。区分は「実際に何を売るか」から決まるのであって、逆ではありません。

電子出願と書面出願

書面で出すと、別途電子化手数料(1件1,200円+書面1枚につき700円)がかかります。オンライン(電子出願)なら不要ですが、電子証明書の準備が要ります。年に1〜2件なら書面、継続して出すなら電子出願が有利です。

区分と指定商品・指定役務でつまずいたら

ここを外すと、権利は取れても自社が守りたい範囲に届きません。しかも、出願した後で区分を追加することはできません。追加したい場合は、別途あらたに出願することになります。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、実際に販売・提供する内容と、これから広げる予定までうかがったうえで、必要な区分と指定商品・指定役務をお示しします。

③ 審査 ── 拒絶理由通知が来たらどうするか

出願すると、まず方式審査(書式の不備の確認)があり、その後実体審査に進みます。実体審査で問題がなければ、そのまま登録査定です。

問題があると拒絶理由通知が届きます。これは不合格通知ではありません。「このままでは登録できないので、反論か修正をしてください」という通知です。

よくある拒絶理由

条文内容主な対応
3条1項各号識別力がない(普通名称・産地・品質をそのまま表す等)使用による識別力の立証、商標の一部変更
4条1項11号先に登録された他人の商標と同一・類似指定商品を減らす、意見書で非類似を主張、コンセント制度、不使用取消審判
4条1項16号品質を誤認させる指定商品を実態に合わせて限定する
6条指定商品・役務の記載が不明確手続補正書で書き直す

応答の期限

拒絶理由通知への応答期間は原則40日(在外者は3か月)です。延長も可能ですが、請求と手数料が要ります。何もせずに期限を過ぎると、拒絶査定が確定します。

応答は、意見書(反論する)と手続補正書(指定商品を減らす等の修正をする)のどちらか、または両方で行います。

それでも拒絶査定になったら

拒絶査定の謄本送達から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求できます。審査官1人ではなく、3人の審判官の合議体が審理します。ここで覆ることは実際にあります。

拒絶理由通知が届いたら、期限を先に確認してください

応答期間は原則40日です。何もしなければ、そのまま拒絶査定が確定します。そして、意見書で反論するか、手続補正書で指定商品を減らすかの選択は、その後の権利範囲をそのまま決めます。減らしすぎれば守れなくなり、粘りすぎれば登録が遠のきます。

初回相談のお申し込みはこちら。通知書をお持ちいただければ、残り期間と取れる手を整理します。

④ 登録 ── 登録料の納付と、10年か5年か

登録査定が届いたら、送達の日から30日以内に登録料を納めます。納付すると設定登録され、2〜3週間ほどで商標登録証が届きます。

納付の仕方金額効果
10年分を一括32,900円×区分数10年間有効
5年分ずつ分納(前期)17,200円×区分数5年間有効。後期も同額を納めて10年に

分納は、合計すると割高になります。10年で見ると一括32,900円に対し、分納は17,200円×2=34,400円です。差は1区分あたり1,500円。手元資金を優先するか、総額を優先するかの判断です。 この30日を落とすと、出願からやり直しになります。審査を通ったのに登録料の納付を忘れる、というのは実際に起きます。期限管理は後述の特許庁の通知サービスも使えます。

更新は何度でもできます

商標権の存続期間は設定登録から10年ですが、更新の申請をすれば何度でも延長でき、半永久的に維持できます。更新できる期間は、満了前6か月から満了日まで。過ぎても6か月以内なら倍額を納めて更新できます。

登録後の侵害対策 ── できること、されたとき

登録して終わりではありません。権利は、使って初めて意味を持ちます。

自社の商標が使われていたら

  1. 証拠を残す。相手のウェブページ、商品、パッケージを日付がわかる形で保存します
  2. 権利の確認。相手の使い方が、自社の指定商品・役務の範囲に入っているかを確認します
  3. 警告書の送付。使用の中止を求めます。多くはここで解決します
  4. 差止請求・損害賠償請求。応じない場合は訴訟になります

ただし、相手の使い方が「商標的使用」でなければ侵害になりません。純粋に装飾として使われている場合や、商品の説明として使われている場合です。ここを見誤ると、こちらが不当な警告をしたことになりかねません。

逆に、警告を受けたら

  1. すぐに使用をやめない。まず相手の権利が本当に有効か、自社の使い方が本当に範囲内かを確認します
  2. 相手の商標が3年以上使われていないなら、不使用取消審判で取り消せる可能性があります
  3. 相手の登録に無効理由があれば、無効審判を請求できます
  4. 自社が相手より先に使っていたなら、先使用権を主張できる場合があります

警告書が来た時点では、まだ何も決まっていません。慌てて回収や廃棄を始める前に、権利の中身を確認してください。

自分で出すか、弁理士に頼むか

手続そのものは、自分でできます。特許庁も個人の出願を想定しています。線が分かれるのは、次の点です。

作業自分で頼んだほうがよい場面
同じ名前があるかの確認できる—
願書の作成・提出できる—
区分と指定商品・役務の決定だいたいできる新しい業態、複数事業、将来の展開も含めたいとき
ヒットした商標が障害かの判断難しいほぼ常に
拒絶理由通知への応答難しいほぼ常に
警告・侵害への対応難しい常に

費用の目安は、特許庁に払う分(1区分で出願12,000円+登録32,900円=44,900円)に加え、弁理士に頼む場合は出願時と登録時を合わせて8万〜15万円程度が相場です。

判断のしかたとしては、その名前を事業の看板にするつもりがあるかどうかで分けるのが実際的です。試験的な商品名なら自分で、長く使う社名・ブランド名なら専門家に、という分け方です。

弁理士はここを見ている

① 「登録できるか」より「どこまで守れるか」を先に考えます。
ご相談で最も多いのが「この名前は登録できますか」という問いですが、私たちが最初に確認するのは「その名前で、何を守りたいのか」です。登録できるかどうかは、指定する商品・役務によって変わります。範囲を狭めれば通りやすくなり、広げれば通りにくくなる。つまり「登録できるか」は、一義的に決まる問いではありません。守りたい範囲を先に決めて、そこから逆算して初めて答えが出ます。

② 拒絶理由通知への応答は、権利範囲を決める作業です。
拒絶理由通知が来ると、多くの方が「どうすれば通るか」だけを考えます。しかし指定商品を削れば通ります。極端に言えば、削り続ければほぼ必ず通る。問題は、削った後に残った権利で、本当に他社を止められるかです。通すことと、使える権利にすることは、別の作業です。ここを分けて考えられるかどうかが、実務の分かれ目になります。

③ 「まだ使っていない名前」こそ、早く出してください。
商標は先に出願した人が優先されます。ところが実際には、商品を発売してから、売れてきてから、と後回しにされる方が非常に多い。売れてきたということは、他社の目にも留まったということです。名前を公表する前、プレスリリースを打つ前、展示会に出す前が、出願のタイミングとしては最も安全です。出願は即日でできます。

よくある質問

Q. 出願から登録まで、結局どのくらいかかりますか。
通常6〜10か月です。内訳は、審査待ちが5〜10か月、登録料の納付から登録証の到着まで2〜3週間。拒絶理由通知が来ると、応答と再審査の分だけ延びます。

Q. 急いでいます。早くする方法はありますか。
早期審査を使えば、出願から1〜3か月で審査結果が来ます。すでにその商標を使っている(または使う準備が相当程度進んでいる)ことなどが要件です。事情説明書を出す必要がありますが、特許庁への追加費用はかかりません。

Q. 区分は、後から追加できますか。
できません。出願後に区分を増やす補正は認められていません。あらためて別に出願することになります。その分の出願料と登録料が二重にかかります。最初に決めておくべき理由がここにあります。

Q. 拒絶理由通知が来ました。もうだめですか。
いいえ。拒絶理由通知は不合格通知ではありません。意見書で反論する、手続補正書で指定商品を限定する、先方と交渉する(コンセント制度)、相手の商標を不使用取消審判で取り消す、といった手が残っています。ただし応答期間は原則40日です。

Q. 登録料は10年分と5年分、どちらがよいですか。
総額では10年一括が有利です(1区分あたり1,500円の差)。ただし、その商標を10年使い続けるか決めかねている段階なら、5年分納にして様子を見る判断もあります。ブランド名なら一括、商品名なら分納、という分け方が実際的です。

Q. 登録した後、何もしなくていいですか。
2つあります。1つは更新(10年ごと)。もう1つは使用の継続です。3年以上使っていないと、第三者から不使用取消審判を請求され、取り消される可能性があります。使っている証拠(カタログ、ウェブページ、納品書)を残しておいてください。

まとめ

  • 商標登録は調査→出願→審査→登録の4段階で、通常6〜10か月
  • 特許庁への費用は、出願3,400円+8,600円×区分数、登録32,900円×区分数(10年分)
  • 失敗の大半は、商標そのものではなく区分と指定商品・役務の決め方で起きる
  • 区分は出願後に追加できない。最初に、実際に売るものから決める
  • 拒絶理由通知は不合格通知ではない。応答期間は原則40日
  • 登録料の納付期限は登録査定の送達から30日。落とすと出願からやり直し
  • 更新すれば半永久的に維持できるが、3年以上使わないと取り消されることがある

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株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著/日本法令/2026年8月刊/A5判568頁/5,500円(税込)/ISBN 978-4-539-73180-2

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