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技術顧問とは?契約料金や報酬相場、役割と社外CTOとの違い

公開日 2026年10月8日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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技術顧問とは、特定の技術分野で豊富な経験を持つ個人が、企業と業務委託契約を結び、技術開発や技術的判断について継続的に助言する役職です。大手メーカーを定年退職した技術者、大学の研究者、他社で製品開発を率いたエンジニアなどが、月数回の面談や随時の相談に応じます。

報酬の相場は月5万〜30万円で、稼働頻度(月1回の面談か、週1回の関与か)と専門性で決まります。社外CTOとの違いは、技術顧問は「助言」に徹し、社外CTOは「意思決定と実行」まで担う点です。

この記事では、技術顧問の役割、契約の形態と料金相場、社外CTO・技術アドバイザー・技術コンサルとの違い、契約書で決めるべきこと、そして技術顧問の助言から生まれた発明・ノウハウが誰のものになるかという、見落とされがちな知財の論点を説明します。

この記事でわかること
  • 技術顧問の役割と、実際に何をするか
  • 契約の形態(業務委託・非常勤・時間制)と報酬相場
  • 社外CTO・技術アドバイザー・技術コンサルとの違い
  • 技術顧問を置くメリットと、向く会社
  • 契約書で決めるべきこと(範囲・秘密保持・競業・成果の帰属)
  • 技術顧問の発明は誰のものか(職務発明の適用外)
  • 元従業員を技術顧問にするときの注意点(雇用との区別)
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

技術顧問とは

定義

法律上の定義はありません。実務では、企業と雇用関係にない外部の技術専門家が、業務委託契約(準委任)に基づき、継続的に技術的な助言を行う形態を指します。

実際にすること

役割内容
技術的判断への助言設計方針、材料選定、製法の選択、技術的なリスクの評価
開発の壁を越える現場が行き詰まった課題に、経験から解決の方向を示す
人材育成若手技術者への指導、技術レビュー
技術動向の共有業界・学会の動向、競合の技術
人脈の提供研究機関、部品メーカー、試験機関の紹介
対外的な信用「〇〇社の元開発部長が顧問」という信用(補助金申請、取引先、投資家)
知財面の助言出願すべき技術の見極め、他社特許の技術的評価

誰がなるか

  • 大手メーカーを定年退職した技術者・開発責任者
  • 大学・研究機関の教授・研究者(兼業)
  • 他社で製品開発を率いた現役・元エンジニア(副業)
  • 特定分野の専門家(材料、電気、ソフトウェア、品質管理など)

契約の形態と報酬相場

形態内容月額の目安
月次面談型月1〜2回の面談(各2〜3時間)+メールでの随時相談5万〜15万円
週次関与型週1回程度の来社・オンライン参加、開発会議への出席15万〜30万円
時間制1時間あたりの単価×実稼働1時間1万〜3万円
プロジェクト型特定の開発プロジェクトの期間だけプロジェクトごとに50万〜300万円
ストックオプション併用スタートアップで、低い月額+SO月0〜10万円+SO

金額を左右する要素

  • 稼働頻度:月1回か、週1回か
  • 専門性の希少さ:その分野の専門家が少ないほど高い
  • 経歴:大手の元役員・部長クラスは高い
  • 成果への関与:助言だけか、設計レビューや試験の立会いまでか
  • 会社の規模:上場企業は月30万〜100万円も

税務

個人への支払は「支払報酬料」または「顧問料」。所得税法204条の列挙業種(弁護士・税理士など)に技術顧問は含まれないため、原則として源泉徴収は不要です。ただし、講演料・原稿料の性質があれば源泉徴収の対象です。消費税は課税で、個人顧問は免税事業者であることが多いのでインボイスの確認が要ります。

社外CTO・技術アドバイザー・技術コンサルとの違い

技術顧問社外CTO技術アドバイザー技術コンサル(法人)
役割助言意思決定と実行(技術戦略、開発体制、採用)助言(技術顧問とほぼ同じ。スタートアップでの呼び方)特定の課題の調査・提案
責任助言に対する善管注意義務経営陣の一員としての責任(役員なら会社法上の責任)助言に対する善管注意義務契約上の成果責任
関与月数回週数日〜月数回プロジェクト期間中
契約業務委託業務委託または役員委任業務委託業務委託(法人間)
報酬月5万〜30万円月30万〜100万円+SO月5万〜15万円+SOプロジェクトごと
向く会社技術的な壁を越えたい、若手を育てたい技術責任者がいない、技術戦略を立てたいスタートアップ特定の課題を短期で解決したい

技術顧問と社外CTOの境界

技術顧問は「こうしたほうがいい」と言う立場、社外CTOは「こうする」と決めて実行する立場です。技術顧問に意思決定を求めると、責任と報酬が釣り合わなくなります。逆に、社外CTOに月5万円で助言だけを求めるのも無理があります。何をしてほしいかで、呼び方と契約が決まります。

技術顧問を置くメリットと、向く会社

メリット

  • 雇用より安い:同等の経験者を正社員で雇えば年収1,000万円以上。顧問なら年60万〜360万円
  • すぐに始められる:採用活動が不要
  • 客観的な視点:社内のしがらみがなく、率直な助言
  • 失敗の回避:経験者は「やってはいけないこと」を知っている。開発の手戻りを減らす
  • 信用:補助金申請、取引先、投資家への説明で「専門家の関与」を示せる

デメリット

  • 助言だけで、実行は社内が担う。社内に受け止める人がいないと機能しない
  • 月数回の関与では、現場の細部まで見られない
  • 競合他社の顧問も兼ねている場合、情報の扱いに注意
  • 元の勤務先の秘密情報を持ち込まれると、自社が不正競争防止法の問題を抱える

向く会社

  • 新しい技術分野に参入するが、社内に経験者がいない
  • 開発が行き詰まっている
  • 若手技術者を育てたいが、指導できる人がいない
  • 補助金・認証・取引先審査で、技術的な裏付けが要る
  • 他社特許への対応で、技術的な評価が要る

契約書で決めるべきこと

項目決めること決めないと起きること
業務の範囲助言の対象分野、面談の頻度・時間、対応方法「もっと関与してほしい」「そこまでは契約外」の争い
報酬月額、時間超過の扱い、交通費、支払日—
秘密保持開示する技術情報の秘密保持、契約終了後も存続顧問経由で技術が外に出る
競業競合他社の顧問を受けられるか、受けるなら通知義務競合に自社の状況が伝わる
成果の帰属助言から生まれた発明・ノウハウ・資料の権利は会社に顧問が発明者として権利を主張する(次章)
元勤務先の情報元勤務先の秘密情報を持ち込まない旨の表明不正競争防止法違反に巻き込まれる
再委託顧問が他の専門家に振ってよいか知らない人に情報が渡る
解除予告期間(1〜3か月)—
雇用でないことの確認指揮命令を受けず、時間・場所を自分で決める労働者と判断される(次々章)
技術顧問の助言から生まれた発明、契約で会社のものになっていますか

技術顧問契約のご相談で、契約書を拝見すると、成果の帰属条項がないものが大半です。顧問は従業員ではないので職務発明の規定が働かず、契約がなければ発明は顧問個人のもの。出願の段階で「権利は私にある」と言われて、初めて気づく。契約時に1条項入れておけば済む話です。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、技術顧問契約書(あれば)を拝見し、成果の帰属・秘密保持・競業・元勤務先情報の各条項の抜けをお示しし、条文案をお渡しします。

技術顧問の発明は誰のものか

ここが、技術顧問契約で最も見落とされる論点です。

職務発明の規定は適用されません

従業員が職務上した発明は、職務発明規程により会社が特許を受ける権利を取得できます(特許法35条)。しかし技術顧問は従業員ではないため、35条の適用がありません。顧問が助言の過程で発明した場合、特許を受ける権利は顧問個人に発生し、契約で定めがなければ会社は権利を取得できません。

起きること

  • 顧問の助言で開発が進み、特許出願する段階で、顧問が「自分が発明者で、権利は自分にある」と主張する
  • 会社が顧問を発明者に入れずに出願すると、冒認出願として無効になる危険
  • 顧問と従業員の共同発明の場合、顧問の持分について契約がなければ、会社は共有者として顧問の同意なしに実施許諾できない

契約書に書くこと

乙(顧問)が本業務の遂行に関連してなした発明、考案、意匠、著作物その他の知的財産(乙と甲の役員・従業員との共同によるものを含む。)について特許を受ける権利その他の知的財産権を受ける権利及び著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、その発生と同時に甲に帰属する。乙は、著作者人格権を行使しない。前記権利の対価は、本契約の報酬に含まれる。

発明者としての記載

権利が会社に帰属しても、顧問が実際に発明に貢献していれば、発明者として願書に記載しなければなりません(発明者は事実の問題で、契約で変えられない)。発明者から漏らすと冒認出願です。

対価

従業員の職務発明には「相当の利益」の請求権がありますが、顧問には適用されません。契約で「報酬に含まれる」と明記すれば、追加の対価は不要です。ただし、大きな発明が予想される場合は、成功報酬を別途定めておくと、顧問の動機づけになります。

顧問の発明を出願するときの、発明者・出願人の書き方
書影

技術顧問との共同発明を出願する場合の、発明者の記載と特許を受ける権利の承継は、株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)の第4編 第2章が扱っています。契約で取得した発明の出願(発明者と出願人が異なる場合の願書の書き方、譲渡証の要否)と、職務発明の適用がない外部者からの承継について書かれています。

第3編 第2章 第1 特許の願書の様式で、発明者欄と出願人欄の記入例を確認できます。

元従業員を技術顧問にするときの注意点

定年退職した技術者を顧問として残す、というのは最も多い技術顧問の形です。問題は、勤務の実態が退職前と変わらないケース。

雇用と判断される要素

雇用と判断されやすい業務委託と判断されやすい
毎日出社、勤務時間が決まっている来社は週1回以下、時間は本人が決める
業務の指示を受け、報告義務がある助言を求められたときに答える
専用の席・パソコン・メールアドレスがある会社の設備は面談時に使う程度
報酬が固定月額で、労働時間に連動報酬が助言の対価で、稼働と独立
他社の仕事を禁止されている他社の顧問も可(競合を除く)

実態が雇用なら、残業代・社会保険・解雇規制がすべて適用され、「顧問契約の解除」ができなくなります。

もう1つ ── 元勤務先の情報

他社を退職した技術者を顧問にする場合、その人が元勤務先の営業秘密を持ち込むと、自社が不正競争防止法上の責任を問われることがあります。契約書に「元勤務先の秘密情報を持ち込まない」旨の表明保証を入れ、実際にも持ち込ませない運用が要ります。

定年退職者を顧問に残すなら、実態も変えてください

退職した技術者を顧問にして、毎日出社・指示・報告が続いていれば、契約書が業務委託でも労働者です。来社頻度、時間の決め方、指示の有無、専用設備の有無を、退職前と変える。そのうえで、顧問の発明の帰属を契約で決める。この2つで、雇用リスクと知財リスクの両方が消えます。

初回相談のお申し込みはこちら。顧問の関与の実態をうかがい、業務委託として成り立つ形と、契約書の条項を整理します。

弁理士はここを見ている

① 技術顧問には職務発明の規定が働きません。契約で決めるしかない。
従業員の発明は職務発明規程で会社に帰属させられますが、技術顧問は従業員ではないので、特許法35条の外にいます。顧問が発明に関与した特許を出願しようとして、初めて「権利は誰のものか」が問題になる。契約書に「本業務に関連してなした発明の特許を受ける権利は会社に帰属し、対価は報酬に含まれる」と入れておく。これがない技術顧問契約は、知財の観点では欠陥品です。加えて、顧問が実際に貢献していれば発明者として願書に載せる。漏らすと冒認出願です。

② 「顧問」と呼んでも、実態が雇用なら労働者です。
定年退職者を顧問として残す会社は多く、それ自体は良い形です。問題は、退職前と同じように毎日出社し、同じ席で、同じ指示を受けている場合。契約書の題名が「顧問契約」でも、労働基準監督署や裁判所は実態で判断します。残業代、社会保険、解雇規制が全部かかり、顧問契約の「解除」ができなくなる。来社は週1回以下、時間は本人が決める、業務は助言に限る。実態を変えて初めて、顧問契約は成り立ちます。

③ 他社を退職した顧問は、元勤務先の秘密を持ち込ませない。
競合他社の元開発責任者を顧問に迎える、というご相談があります。経験は貴重ですが、その人が元勤務先の営業秘密(図面、製法、顧客情報)を持ち込むと、受け取った自社が不正競争防止法違反に問われます。実際に、元勤務先から差止と損害賠償を請求された事例があります。契約書に「元勤務先の秘密情報を持ち込まない」旨の表明保証を入れ、面談の記録を残し、持ち込まれた疑いのある情報は使わない。顧問の経験は使い、情報は使わない、という線引きです。

よくある質問

Q. 技術顧問とは何ですか。
特定の技術分野で経験豊富な個人が、企業と業務委託契約を結び、技術開発や技術的判断について継続的に助言する役職です。雇用ではなく、助言に徹するのが特徴です。

Q. 報酬の相場はいくらですか。
月1〜2回の面談型で月5万〜15万円、週1回の関与型で月15万〜30万円、時間制なら1時間1万〜3万円が目安です。稼働頻度と専門性の希少さで決まります。

Q. 社外CTOとの違いは何ですか。
技術顧問は「助言」、社外CTOは「意思決定と実行」です。社外CTOは技術戦略・開発体制・採用まで担い、報酬も月30万〜100万円と高い。何をしてほしいかで呼び方と契約が決まります。

Q. 技術顧問の発明は誰のものですか。
契約で定めがなければ顧問個人のものです。従業員ではないため職務発明の規定(特許法35条)が適用されません。契約書に「発明の権利は会社に帰属し、対価は報酬に含まれる」と明記します。貢献していれば発明者としての記載は必要です。

Q. 源泉徴収は必要ですか。
原則不要です。技術顧問は所得税法204条の列挙業種に含まれません。ただし講演料・原稿料の性質があれば必要です。消費税は課税で、インボイス登録の有無を確認してください。

Q. 退職した社員を顧問にする際の注意点は。
勤務の実態を変えることです。毎日出社・指示・報告が続けば、契約書が業務委託でも労働者と判断され、残業代・社会保険・解雇規制が適用されます。来社は週1回以下、時間は本人が決め、業務は助言に限ります。

Q. 競合他社出身の技術顧問を迎えるときの注意点は。
元勤務先の営業秘密を持ち込ませないことです。持ち込まれると自社が不正競争防止法違反に問われます。契約書に表明保証を入れ、経験は使うが情報は使わない運用にします。

まとめ

  • 技術顧問は、外部の技術専門家が業務委託で継続的に助言する役職。雇用ではない
  • 報酬は面談型で月5万〜15万円、関与型で月15万〜30万円。源泉徴収は原則不要
  • 社外CTOは意思決定と実行を担い、報酬も高い。助言か、決定かで区別
  • メリットは雇用より安く、すぐ始められ、失敗を回避できる。社内に受け止める人が要る
  • 契約書で範囲・秘密保持・競業・成果の帰属・元勤務先情報・雇用でないことを決める
  • 顧問の発明には職務発明が適用されない。契約で会社に帰属させる。発明者の記載は事実どおり
  • 元従業員の顧問化は、勤務の実態を変えないと労働者と判断される
  • 競合出身者は元勤務先の秘密を持ち込ませない。表明保証と運用で

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