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業務委託契約書の書式テンプレート・ひな型の無料ダウンロード

公開日 2026年10月19日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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業務委託契約書のひな型は、無料で配布されているものが数多くあります。ただし、汎用のひな型には、知的財産の条項がほとんど入っていません。入っていても「成果物の著作権は委託者に帰属する」の一文だけ、というものが大半です。

それで足りる仕事もあります。足りないのは、成果物に技術やデザインが含まれる仕事です。開発、設計、デザイン制作、コンテンツ制作。この場合、著作権だけを移してもらっても、特許を受ける権利は受託者側に残ります。納品物は自社のものなのに、その中の発明は相手のもの、という状態が起こります。

当事務所では、この点を補った業務委託契約書のひな型を配布しています。この記事では、ひな型の使い方とあわせて、汎用ひな型のどこが足りないのかを条項ごとに説明します。

この記事でわかること
  • 業務委託契約書に最低限必要な条項(19条の構成)
  • 汎用ひな型に入っていない、知的財産の5条項
  • 著作権の移転に「27条・28条」を書かないと何が起きるか
  • 受託者の従業員がした発明は、誰のものになるか
  • 委託者側・受託者側で、どこが交渉点になるか
  • 収入印紙が必要な場合と不要な場合
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

業務委託契約書に必要な条項

当事務所が配布しているひな型は、次の19条で構成しています。網かけが、知的財産に関する条項です。

条条名
第1条目的
第2条委託業務
第3条個別契約の成立
第4条再委託知財
第5条納入および検収
第6条委託料および支払
第7条成果物の著作権知財
第8条特許を受ける権利等知財
第9条第三者の知的財産権の非侵害知財
第10条改良知財
第11条秘密保持知財
第12条契約不適合責任
第13条損害賠償知財
第14条有効期間
第15条解除
第16条反社会的勢力の排除
第17条存続条項知財
第18条譲渡禁止
第19条協議および合意管轄

19条のうち8条が知的財産に関わります。汎用のひな型では、このうち第7条(それも簡略な形)だけ、というものが多い。

第7条 成果物の著作権 ── 「27条・28条」を書かないと移らない

著作権を委託者に移す条項は、汎用ひな型にも入っています。問題は書き方です。

足りない書き方:「成果物に関する著作権は、委託者に帰属する。」

これでは不十分です。著作権法61条2項に、翻案権(27条)と二次的著作物の利用権(28条)は、譲渡の目的として特掲されていない限り、譲渡人に留保されたものと推定するという規定があるためです。

つまり、27条・28条と明記しないと、その2つは相手に残ります。納品されたウェブサイトを後から改修できない、デザインを流用して別商品を作れない、といった事態が起きます。

必要な書き方:「成果物に関する著作権(著作権法第27条および第28条に定める権利を含む。)は、委託者が第6条の委託料を完済した時をもって、受託者から委託者に移転する。」

著作者人格権の不行使も必要です

著作者人格権(公表権・氏名表示権・同一性保持権)は、譲渡できません。相手に残り続けます。だから「行使しない」と約束してもらう条項が要ります。

これがないと、成果物を改変したときに同一性保持権の侵害を主張される余地が残ります。

受託者の既存著作物は留保する

逆に、受託者が従前から持っていたライブラリやテンプレートまで移転させると、受託者は同じものを他で使えなくなります。実務では通りません。既存著作物は受託者に留保し、委託者には目的の範囲で利用を許諾するという形にします。

成果物に含まれる発明を、自社で出願するなら
書影

契約で特許を受ける権利を承継したら、次は自社名義での出願です。株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)に、特許願の書き方が記入例つきで収められています。

本記事に関係するのは第3編 第2章 第1 特許(1)特許願と、第4編 第2章 第2 将来の知的財産の上流戦略(7)上場前に必ず整えるべき知財の3ポイントです。後者には「(ii)法的安全性」「(ii)共同開発の注意点」があり、外注先との権利関係が整理されているかという論点が扱われています。

第8条 特許を受ける権利等 ── 著作権とは別に必要

ここが、汎用ひな型に最も入っていない条項です。

著作権と特許を受ける権利は、別の権利です。「著作権は委託者に帰属する」と書いても、成果物に含まれる発明について特許を受ける権利は、発明者である受託者側に残ります。

納品されたシステムは自社のもの。ところが、その中の仕組みについて特許を出願できるのは受託者。しかも受託者は、同じ仕組みを他社にも提供できる。

第2項が抜けると、意味がなくなります

もう一つ、見落とされやすい点があります。受託者が法人の場合、実際に発明をするのは受託者の従業員です。職務発明(特許法35条)の規律により、その権利はまず従業員に発生します。受託者が自社の従業員から承継していなければ、受託者は委託者に渡すべき権利を持っていません。

だから、次の2項が要ります。

「受託者は、前項の権利の承継に関し、自己の従業者等との間で必要な措置を講じる。」

この一文がないと、第1項は空手形になります。受託者に職務発明規程があるか、譲渡の合意があるかまで含めた条項です。

対価の定めも入れておく

権利を移転させる以上、その対価をどうするかを書いておきます。委託料に含むのか、別途協議するのか。ここが空白だと、後から争いになります。

すでに結んでいる契約書を、見直したい方へ

いま使っている業務委託契約書に、第8条(特許を受ける権利等)にあたる条項が入っているかを確認してみてください。入っていない場合、すでに納品を受けた成果物についても、その中の発明は相手方に残っている可能性があります。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、現在お使いの契約書を拝見し、知的財産に関する条項の過不足を洗い出します。委託者側・受託者側のどちらの立場でも承ります。

第9条 第三者の知的財産権の非侵害 ── 但書が交渉点

納品された成果物が、第三者の特許や著作権を侵害していた場合、誰が責任を負うか。

「受託者は、成果物が第三者の知的財産権を侵害しないことを保証する。成果物に関し第三者との間に紛争が生じたときは、受託者は自己の費用と責任においてこれを解決する。ただし、委託者の指示に起因する場合は、この限りでない。」

但書がないと、受託者が過大な責任を負います。委託者が「この方式で作ってくれ」と指示した結果として侵害が生じた場合まで、受託者の責任にするのは実態に合いません。 受託側で使う場合、ここは必ず交渉してください。非侵害の「保証」は、実務上かなり重い約束です。世界中の特許を調べ尽くすことは誰にもできません。「知る限りにおいて」という限定を入れる、調査の範囲を特定するといった修正が現実的な着地点になります。

第10条 改良/第13条 損害賠償/第17条 存続条項

第10条 改良

納品後、委託者が成果物を改良して新しい知的財産が生まれた場合、その権利をどうするか。ここが空白だと、継続的な取引で必ず揉めます。

第13条 損害賠償 ── 上限から外すものがある

損害賠償には上限を設けるのが通常です(委託料の額を上限とするなど)。ただし、第9条の知的財産権の非侵害に基づく責任は、上限から外しておくべきです。

特許侵害の賠償額は、委託料とは桁が違うことがあります。上限を委託料にしてしまうと、侵害品を納品されても、委託料の分しか取り返せません。ここを分けて書けるかどうかが、弁理士が入る意味の出る箇所です。

第17条 存続条項

知財条項は、契約が終わった後も効いていなければ意味がありません。著作権の移転、特許を受ける権利、非侵害、改良、秘密保持、これらを存続条項に列挙します。抜けがあると、契約終了とともに効力を失います。

第4条 再委託 ── 三者間で権利が迷子になる

受託者がさらに外注する場合の条項です。汎用ひな型では「委託者の承諾を得て再委託できる」で終わっていることが多い。

問題は、再委託先が作った部分の権利です。再委託先と受託者の間で権利の移転が定められていなければ、その部分の著作権や特許を受ける権利は再委託先に残ります。受託者は持っていない権利を委託者に渡すことになり、やはり空手形です。

「受託者は、再委託先に対し、本契約に基づき受託者が負うのと同等の義務(第8条から第12条までを含む。)を課し、その履行について委託者に対し責任を負う。」

条番号まで書いておくのがコツです。「同等の義務」とだけ書くと、どこまでが同等かで解釈が割れます。

再委託を使う体制の方へ

元請け・下請け・再委託先と三者以上が関わる体制では、どこか1か所で権利の移転が切れていると、最終的に委託者に権利が届きません。しかも、切れていることは納品時には分かりません。他社から警告を受けたときや、自社で特許を出そうとしたときに初めて表面化します。

初回相談のお申し込みはこちら。契約の連鎖をたどって、権利が届いているかを確認します。

収入印紙は必要か

業務委託契約書に収入印紙が必要かどうかは、契約の中身で決まります。表題ではありません。

契約の性質該当する文書印紙
請負(仕事の完成を約束する)第2号文書必要
継続的な請負の基本契約(3か月超)第7号文書必要(4,000円)
委任・準委任(事務の処理を委託する)いずれにも該当しない不要

第2号文書の印紙税額は契約金額によって変わります(1万円未満は非課税、100万円以下200円、200万円以下400円…)。

電子契約であれば、印紙は不要です。印紙税法上の「文書」に当たらないと解されているためです。年に何十件も契約を交わすなら、電子契約に切り替えるだけで印紙代が消えます。

弁理士はここを見ている

① 「著作権は移転する」だけの契約書を、いちばん多く見ます。
開発やデザインの委託で、契約書に著作権の条項はあるのに、特許を受ける権利の条項がないというケースが圧倒的に多い。この状態だと、納品物は自社のものなのに、その中の発明について出願できるのは相手方です。しかも相手方は、同じ仕組みを他社にも提供できます。後から「あの発明はうちのものだ」と言っても、契約に書いていなければ通りません。契約書を作る段階でしか手当てできない論点です。

② 第8条第2項がない契約書は、第1項も効きません。
「受託者が本業務の過程でなした発明に係る特許を受ける権利は、委託者に帰属する」。この一文だけを置いている契約書をよく見ます。しかし受託者が法人なら、発明をするのはその従業員です。職務発明の規律により、権利はまず従業員に発生します。受託者が自社の従業員から承継していなければ、委託者に渡すべき権利を持っていない。「自己の従業者等との間で必要な措置を講じる」という第2項があって、はじめて第1項が動きます。ここまで書いてある契約書は、実務でもそう多くありません。

③ 損害賠償の上限は、知財侵害だけ外してください。
賠償額の上限を委託料とする条項は、受託者を守るために合理的です。ただし、第三者の特許を侵害した成果物を納品された場合まで同じ上限にすると、委託者は救われません。特許侵害の賠償額は、委託料の何十倍にもなり得ます。実務では「故意または重大な過失による場合、および第三者の知的財産権の非侵害に基づく責任については、この限りでない」と例外を置きます。この一文があるかどうかで、事故が起きたときの結果がまったく変わります。

よくある質問

Q. ひな型はどこでもらえますか。
当事務所で配布しています。成果物型の業務委託契約書(19条)で、知的財産に関する条項を8条含んでいます。秘密保持契約書(技術開示用・17条)、共同開発契約書(16条)とあわせて3種をご用意しています。初回相談の際にお渡ししています。

Q. 汎用のひな型では、なぜ足りないのですか。
汎用ひな型は、あらゆる業務委託に共通する部分を書いたものです。成果物に技術やデザインが含まれる場合に必要な条項は、範囲外になっています。具体的には、特許を受ける権利、改良、再委託先への義務の連鎖、知財侵害を賠償上限から外すこと、などです。

Q. 著作権の条項に「27条・28条」と書くのはなぜですか。
著作権法61条2項に、翻案権(27条)と二次的著作物の利用権(28条)は、譲渡の目的として特掲されていない限り譲渡人に留保されたものと推定するという規定があるためです。書かないと、この2つは相手に残ります。納品物を後から改修・流用できなくなります。

Q. 受託者側です。この条項をそのまま受け入れてよいですか。
いいえ。とくに第9条の非侵害保証は重い約束です。世界中の特許を調べ尽くすことは不可能ですから、「知る限りにおいて」という限定や、調査範囲の特定を交渉してください。第8条の対価も、委託料に含むのか別途かを明確にしておくべきです。

Q. 収入印紙は必要ですか。
契約の中身によります。請負であれば必要(第2号文書)、継続的な基本契約なら4,000円(第7号文書)、委任・準委任であれば不要です。表題が「業務委託契約書」でも、中身で判断されます。電子契約であれば印紙は不要です。

Q. すでに結んだ契約を、いまから直せますか。
覚書や変更契約で追加することは可能です。ただし、すでに納品された成果物についての権利は、当時の契約の内容で決まります。遡っての手当てには相手方の同意が要ります。早い段階でご相談ください。

まとめ

  • 業務委託契約書のひな型は、当事務所で配布している(19条中8条が知財条項)
  • 汎用ひな型に最も欠けているのが第8条(特許を受ける権利等)。著作権とは別に必要
  • 著作権の移転は「著作権法第27条および第28条に定める権利を含む」と明記しないと、翻案権が移らない
  • 著作者人格権の不行使も必要。人格権は譲渡できない
  • 第8条は第2項(受託者が自社の従業者等から承継する措置)がないと空手形になる
  • 非侵害保証の但書と、損害賠償上限からの知財侵害の除外が交渉点
  • 再委託では、条番号を特定して義務を連鎖させる
  • 収入印紙は中身で決まる。委任・準委任なら不要、電子契約なら常に不要

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