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意匠権の存続期間について|25年への改正と起算日

公開日 2026年10月8日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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意匠権の存続期間は、出願日から25年です。2020年4月1日に施行された改正意匠法で、それまでの「登録日から20年」から変わりました。

年数が伸びただけではありません。起算日も「登録日」から「出願日」に変わっています。審査に時間がかかった分は権利期間に食い込むようになったため、25年と20年の差は見かけほど大きくありません。

この記事では、改正の前後で何が変わったか、どの出願にどちらが適用されるか、関連意匠の存続期間の特則、そして期間内に権利を失う場合までを説明します。

この記事でわかること
  • 改正前後の存続期間と起算日の違い
  • 自社の意匠権にどちらが適用されるか(出願日で決まる)
  • 起算日が変わったことの実務上の意味
  • 関連意匠の存続期間の特則
  • 期間内に権利を失う場合(登録料の不納付など)
  • 四法の存続期間の比較
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

改正で何が変わったか

改正前改正後
存続期間20年25年
起算日設定登録の日出願日
適用される出願2020年3月31日以前の出願2020年4月1日以後の出願

どちらが適用されるかは、出願日で決まります

登録日ではありません。2020年3月31日以前に出願した意匠は、登録が2020年4月以降であっても、改正前の「登録日から20年」が適用されます。

なぜ改正されたのか

  • ロングライフデザインの保護。長く売れる製品のデザインを、より長く守るため
  • 特許(出願日から20年)・商標(登録日から10年)との整合。とくに起算日を出願日にそろえること
  • 国際的な調和。欧州の意匠は最長25年

起算日が変わったことの意味

ここが、改正で最も見落とされる点です。

改正前:登録日起算

審査に何年かかっても、登録された日から20年ありました。審査期間は権利期間に食い込みません。

改正後:出願日起算

出願日から25年です。審査にかかった期間は、権利期間から差し引かれます。

出願から登録まで1年かかれば、権利を行使できるのは24年。
2年かかれば23年。

実質的な差は、5年より小さい

意匠の審査は平均6か月前後なので、実質的には「登録日から約24年半」と考えると、改正前の「登録日から20年」との差は4年半程度です。

だからこそ、早期審査で登録を早めることが、そのまま権利期間を伸ばすことにつながります。意匠の早期審査は、特許庁への追加費用がかかりません。

審査期間が、そのまま権利期間を削ります

出願日起算になったことで、登録が1年遅れれば、権利を使える期間も1年短くなります。意匠の早期審査は特許庁への追加費用がかからず、要件を満たせば2か月程度で登録されます。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、早期審査の対象になるか、事情説明書に何を書くかを整理します。事業化が決まっているデザインなら、使わない理由がありません。

関連意匠の存続期間

関連意匠とは、本意匠に類似する意匠を、本意匠と関連づけて登録する制度です。同じコンセプトのバリエーションをまとめて守るために使います。

存続期間の特則

関連意匠の存続期間は、本意匠(基礎意匠)の出願日から25年です。関連意匠自体の出願日ではありません。

本意匠を2021年4月1日に出願し、関連意匠を2023年4月1日に出願した場合
→ 関連意匠の存続期間も2046年4月1日まで(本意匠と同じ日に終わる)

関連意匠は、本意匠の権利期間を延ばす道具ではありません。同じ期間内で、守る範囲を広げる道具です。

2020年改正で、関連意匠も変わりました

改正前は、関連意匠を出願できるのは本意匠の公報発行前までで、関連意匠に類似する意匠(関連意匠の関連意匠)は登録できませんでした。改正後は、本意匠の出願から10年以内であれば関連意匠を出願でき、関連意匠にのみ類似する意匠も登録できるようになりました。

デザインを段階的に発展させる製品では、この改正が大きく効きます。

関連意匠と登録料の納付を、自分で進めるなら
書影

株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)の第3編 第2章 第3 意匠(4)関連意匠に、概要・要件・様式が収められています。

登録料の納付と期限管理は第3編 第3章 第4 登録意匠です。(1)設定登録(納付期限・納付期限の徒過・期間延長)、(2)期間延長請求書、(5)自動納付、(6)登録料納付書、(7)期限管理という構成です。特許権と意匠権の効果の差については第4編 第1章 第3 意匠権(2)に、事例つきで整理されています。

期間内に権利を失う場合

25年を待たずに消滅する場合があります。

① 登録料の不納付

最も多い消滅原因です。意匠権を維持するには、毎年の登録料を納めます。

年分金額(年あたり)
第1年〜第3年8,500円
第4年〜第25年16,900円

納付を忘れても、期限から6か月以内なら追納できます(割増登録料が必要)。それも過ぎると消滅します。

② 無効審判

登録に無効理由(新規性がなかった、創作が容易だった等)があった場合、無効審判で無効にされます。無効審決が確定すると、初めから存在しなかったものとみなされます。

③ 放棄

使わなくなったデザインの登録料を止める、という形で実務上よく行われます。ただし、本意匠を放棄しても関連意匠は残ります(改正後)。

④ 秘密意匠の期間

秘密意匠制度で登録内容を秘密にできるのは、設定登録の日から最長3年です。これは存続期間とは別の話ですが、混同されやすいので触れておきます。

使っていない意匠に、登録料を払い続けていませんか

第4年以降は年16,900円。10件あれば年17万円です。ところが、その意匠がいまどの製品を守っているのかを社内で説明できないという状態は珍しくありません。逆に、まだ売れている製品のデザインの登録料を、担当者交代で落としてしまう事故もあります。

初回相談のお申し込みはこちら。保有する意匠を棚卸しし、維持するもの・手放すもの・関連意匠で補強するものに仕分けします。

四法の存続期間の比較

権利存続期間起算日更新
特許権20年(延長で最大25年)出願日不可
実用新案権10年出願日不可
意匠権25年出願日(2020年4月1日以後の出願)不可
商標権10年設定登録の日何度でも可

意匠は、四法の中で最も長い

更新できない権利の中では、意匠権が最長です。特許の20年より5年長く、しかも審査が速く費用も安い。

特許と意匠の併願という組み立て

同じ製品について、仕組みは特許、外観は意匠で押さえておくと、特許が20年で切れた後も、意匠であと5年守れます。さらに製品名を商標で押さえれば、更新で半永久です。

権利は、種類ごとに切れる時期が違います。これを組み合わせて、事業の寿命に合わせた保護を設計するのが実務です。

弁理士はここを見ている

① 「25年に伸びた」より「出願日起算になった」のほうが、実務では効きます。
改正の説明では「20年から25年に延長」が見出しになります。しかし実務で毎回効いてくるのは、起算日が登録日から出願日に変わったことのほうです。審査期間がそのまま権利期間を削るようになった。だから、意匠でも早期審査を使う意味が出てきました。特許庁への追加費用はかかりません。事業化が決まっているデザインで早期審査を使わないのは、権利期間を自分で捨てているのと同じです。

② 関連意匠は「期間を延ばす」道具ではなく「範囲を広げる」道具です。
関連意匠の存続期間は、本意匠の出願日から25年です。関連意匠を後から出しても、終わる日は本意匠と同じ。ここを誤解して「関連意匠で権利を延命できる」と考えている方がいます。できません。関連意匠の役割は、本意匠の類似範囲の外側を埋めて、少し変えた模倣品を止められるようにすることです。1件の意匠権は穴が開きやすい。面で押さえるための道具です。

③ 改正前の意匠権を持っている会社は、期間の数え方が混在します。
2020年3月31日以前に出願した意匠は「登録日から20年」、4月1日以後は「出願日から25年」。同じ会社の権利一覧の中に、両方の数え方が混在します。管理表で満了日を一律の式で計算していると、古い権利の満了日を間違えます。出願日を見て、どちらの制度かを1件ずつ確認してください。特許庁の通知サービスに登録しておけば、この計算を自分でしなくて済みます。

よくある質問

Q. 意匠権は何年ですか。
出願日から25年です(2020年4月1日以後の出願)。2020年3月31日以前の出願は、設定登録の日から20年です。

Q. 自社の意匠権はどちらが適用されますか。
出願日で決まります。登録日ではありません。2020年3月31日以前に出願していれば改正前(登録日から20年)、4月1日以後なら改正後(出願日から25年)です。

Q. なぜ起算日が出願日に変わったのですか。
特許(出願日から20年)との整合と、審査を意図的に長引かせることで権利期間を伸ばす余地をなくすためです。その代わり、審査期間が権利期間に食い込むようになりました。

Q. 関連意匠の存続期間はどうなりますか。
本意匠の出願日から25年です。関連意匠自体の出願日からではありません。関連意匠は権利期間を延ばすものではなく、守る範囲を広げるものです。

Q. 登録料を払い忘れました。
期限から6か月以内なら追納できます(割増登録料が必要)。それも過ぎると消滅します。まず期限からの経過日数を確認してください。

Q. 更新はできますか。
できません。更新できるのは商標権だけです。ただし、特許と意匠を併願しておけば、特許が20年で切れた後も意匠で5年守れます。製品名は商標で押さえれば半永久です。

Q. 秘密意匠の3年とは何ですか。
秘密意匠制度で、登録内容を秘密にできる期間です。設定登録の日から最長3年。存続期間(25年)とは別の話で、秘密期間が終わっても権利は続きます。

まとめ

  • 意匠権の存続期間は出願日から25年(2020年4月1日以後の出願)
  • 2020年3月31日以前の出願は設定登録の日から20年。出願日で決まる
  • 起算日が登録日から出願日に変わったため、審査期間が権利期間に食い込む
  • 実質的な差は5年より小さい。早期審査で登録を早めれば、そのぶん権利期間が伸びる
  • 関連意匠の存続期間は本意匠の出願日から25年。期間を延ばす道具ではない
  • 登録料の不納付が最も多い消滅原因。6か月以内なら追納できる
  • 意匠は更新できない権利の中で最長。特許20年+意匠25年+商標半永久の組み合わせで設計する
  • 改正前後の権利が混在する会社は、満了日の計算を1件ずつ確認する

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株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著/日本法令/2026年8月刊/A5判568頁/5,500円(税込)/ISBN 978-4-539-73180-2

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