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実用新案権の存続期間は何年?特許との違いと起算日

公開日 2026年10月8日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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実用新案権の存続期間は、出願日から10年です(実用新案法15条)。特許権の20年の半分で、起算日は特許と同じく「出願日」。無審査で出願から2〜3か月で登録されるため、登録から満了までの実質的な権利期間は約9年半と、特許(2〜4年の審査を引いて約16〜18年)より起算の無駄が少ないのが特徴です。

10年という短さは、実用新案が「小発明」──製品寿命の短い改良、物品の形状・構造の工夫──を、安く早く守る制度として設計されているためです。維持費(登録料)も10年累計で約9万円(請求項5)と、特許の20年約107万円の10分の1以下。

この記事では、存続期間の数え方と起算日、特許との違い(期間・対象・審査・費用・権利行使)、期間内に消滅する場合、延長できないこと、旧法(6年)との違い、実用新案から特許への変更出願と期間の関係、そして10年で足りる発明・足りない発明の見分け方を説明します。

この記事でわかること
  • 実用新案権の存続期間(出願から10年)と起算日
  • 特許との違い(期間・保護対象・審査・費用・権利行使)
  • 登録料(年金)の金額と納付期限、期間内に消滅する場合
  • 延長制度がないこと
  • 旧法(出願から6年)との違いと、適用の境目(2005年4月)
  • 実用新案から特許への変更出願と、期間・起算日の関係
  • 10年で足りる発明・足りない発明の見分け方
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

存続期間と起算日

条文

実用新案法15条:実用新案権の存続期間は、実用新案登録出願の日から10年をもって終了する。

数え方

出願日:2026年4月1日
登録日:2026年6月15日(無審査、約2〜3か月)
満了日:2036年4月1日(出願日の10年後の応当日。前日までが権利)
→ 実質的な権利期間:2026年6月〜2036年4月の約9年10か月

「出願日」起算の意味

権利が発生するのは登録日ですが、期間は出願日から数えます。特許は審査に2〜4年かかるため実質16〜18年ですが、実用新案は無審査で登録が早いため、10年のほとんどが実際の権利期間になります。

登録料の「年分」との違い

登録料(年金)の第1年・第2年…は登録日から数えます。存続期間は出願日から。2つの起算日があることに注意。第1〜3年分は登録時に一括、第4年分以降は前年までに納付します。

特許との違い

実用新案特許
存続期間出願から10年出願から20年
起算日出願日出願日
実質的な権利期間約9年半(登録が早い)約16〜18年(審査で2〜4年消費)
延長なし医薬品等で最大5年、審査遅延分
保護対象物品の形状・構造・組合せに係る考案(方法・製造方法・物質・プログラムは不可)発明全般(物・方法・製造方法・プログラム)
審査無審査(形式・基礎的要件のみ)実体審査(審査請求が要る)
登録まで2〜3か月2〜4年
特許庁費用(出願〜登録)出願14,000円+第1〜3年分登録料6,600円(請求項5)=約2万円出願14,000円+審査請求158,000円+第1〜3年分17,400円=約19万円
年金(請求項5)第1〜3年:年2,600円
第4〜6年:年7,600円
第7〜10年:年22,600円
第1〜3年:年5,800円
第4〜6年:年14,300円
第7〜9年:年34,300円
第10年〜:年82,400円
満期まで維持した累計(請求項5)約12万円(10年、出願料込み)約124万円(20年、出願料・審査請求料込み)
権利行使技術評価書の提示が必要(29条の2)。無効になった場合、権利者が損害賠償責任を負うことも(29条の3)登録後すぐ
減免なしあり

期間の短さは、費用の安さと表裏

実用新案は「10年で十分な小さな改良を、審査なしで安く早く」という制度です。20年守りたい基幹技術には向かず、5〜10年で世代交代する製品の改良に向いています。

「10年で足りるか」を、出願前に決めてください

実用新案は、特許の10分の1の費用で、無審査で2〜3か月で登録され、10年続きます。製品寿命が10年以内の改良なら、特許で20年の年金を払うより合理的です。逆に、20年守りたい技術を実用新案で出すと、10年で消えます。この見極めを、出願のときに製品の寿命から行います。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、発明の内容と製品の想定寿命をうかがい、実用新案(10年)か特許(20年)か、まず実用新案で出して3年以内に特許へ変更するか、を費用の見通しと合わせてお示しします。

登録料と、期間内に消滅する場合

登録料(請求項数別・年額)

年分基本額加算額(請求項1つ)請求項5の年額
第1〜3年2,100円100円2,600円
第4〜6年6,100円300円7,600円
第7〜10年18,100円900円22,600円

納付期限

  • 第1〜3年分:出願と同時に一括納付(特許と違い、出願時に登録料を納める。無審査ですぐ登録されるため)
  • 第4年分以降:前年分の期限まで。複数年分まとめて可
  • 追納:期限から6か月以内、倍額

期間内に消滅する場合

原因内容
登録料の不納追納期間も過ぎると、期限の時にさかのぼって消滅。最も多い
無効審決の確定初めから存在しなかったものに。無審査なので無効理由を含む権利が多く、無効審判で消える割合は特許より高い
放棄放棄書の提出、または登録料を納めない
特許への変更出願変更出願をすると、元の実用新案登録出願は取り下げたものとみなされる(登録後の変更は、実用新案権を放棄する)
実用新案の出願書類と、登録料・期限管理
書影

実用新案登録出願は、四法の中で最も自力出願に向いた手続です。株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)の第3編 第2章 第2 実用新案に、実用新案登録願・明細書・実用新案登録請求の範囲・図面の様式と記入例、出願時の登録料の納付、技術評価の請求方法が収められています。

第3編 第3章 第3 実用新案権には、第4年分以降の登録料の納付と期限管理、第1編には特許と実用新案の使い分け(10年で足りるか、対象が物品の形状・構造か)が書かれています。

延長制度はない

特許には、医薬品等の承認に要した期間や審査遅延を補う延長制度がありますが、実用新案には延長制度がありません。出願から10年で必ず終わります。

「10年後も守りたい」なら

  • 出願時に特許で出す(20年)
  • 実用新案登録出願から3年以内なら、特許出願に変更できる(後述)
  • 10年後に新しい改良があれば、その改良を新たに出願(元の考案は公知になっているので、改良部分だけ)
  • 形状に特徴があれば、意匠(25年)で別途守る

旧法(6年)との違い

旧法現行法
存続期間出願から6年出願から10年
適用2005年3月31日以前の出願2005年4月1日以降の出願
特許への変更出願から一定期間のみ出願から3年以内、かつ技術評価の請求前等の条件
訂正限定的1回に限り請求項の減縮等の訂正が可能

さらに古い制度

1993年の改正で、実用新案は審査ありから無審査登録制度に変わりました(1994年1月施行)。それ以前の実用新案は、審査を経て登録され、存続期間は出願公告から10年(最長出願から15年)でした。

現在有効な実用新案権は、すべて現行法(10年)の対象です。2005年3月以前の出願は、6年の期間を既に満了しています。

特許への変更出願と期間の関係

制度

実用新案登録出願は、出願日から3年以内であれば、特許出願に変更できます(特許法46条)。逆に、特許出願を実用新案登録出願に変更することもできます(最初の拒絶査定謄本送達から3か月以内、または出願から9年6か月以内)。

変更した場合の期間

  • 変更後の特許出願は、元の実用新案登録出願の日に出願したものとみなされる(出願日は遡る)
  • 特許権の存続期間は、その元の出願日から20年
  • 元の実用新案登録出願は取り下げたものとみなされる。既に登録されていれば、実用新案権を放棄する必要がある

2026年4月1日:実用新案登録出願(登録は6月)
2028年10月1日:特許出願に変更(3年以内)。実用新案権は放棄
→ 特許出願の出願日は2026年4月1日とみなされ、特許権は2046年4月1日まで

使い方

「まず実用新案で早く安く権利化し、製品が売れて20年守る価値が出てきたら、3年以内に特許に変更する」という戦略が取れます。ただし、変更する特許出願は実体審査を受けるので、新規性・進歩性が要ります(実用新案の登録は無審査なので、特許になる保証はない)。

実用新案に基づく特許出願の制限

実用新案の技術評価を請求した後、または実用新案権に基づいて侵害警告をした後は、変更できません。変更するなら、技術評価書を請求する前に。

実用新案で出しておいて、売れたら3年以内に特許へ

「特許にするほどか分からないが、権利は欲しい」という発明は、まず実用新案で出し(約2万円・無審査・2〜3か月で登録)、製品が売れて20年守る価値が出たら、出願から3年以内に特許出願に変更する、という組み方があります。出願日は実用新案の出願日に遡り、特許権は元の出願日から20年です。

初回相談のお申し込みはこちら。実用新案で出願済みの方は、3年の期限と技術評価請求前という条件を確認し、特許への変更が有利かどうかを判断します。

10年で足りる発明・足りない発明

10年で足りる(実用新案向き)10年で足りない(特許向き)
製品寿命が5〜10年の改良品基幹技術、長期に使う製法
物品の形状・構造の工夫(治具、器具、部品の形)方法・製造方法・化学物質・プログラム(そもそも実用新案の対象外)
数年でモデルチェンジする製品の構造ライセンス収入を長く見込む技術
早く「登録」の実績が欲しい(補助金・取引先・融資)模倣品と本気で争う予定(技術評価書のハードル)
特許にするには進歩性が微妙な小改良進歩性が明確で、20年守る価値がある
出願費用を最小にしたい(約2万円)費用より権利の強さ・長さ

迷ったら

物品の形状・構造か → No → 特許(実用新案は対象外)
→ Yes → 10年後もその構造を使っているか → No → 実用新案
→ Yes → 20年守る価値があるか → Yes → 特許(または実用新案で出して3年以内に変更)

意匠との組合せ

物品の形状に特徴があるなら、実用新案(構造・10年)と意匠(見た目・25年)を組み合わせると、実用新案が切れた後も見た目は守れます。

弁理士はここを見ている

① 実用新案の10年は「短い」のではなく、「合っている」発明があります。
実用新案のご相談で、「10年しかないなら特許で」と言われることがありますが、製品寿命が5〜10年の改良品に、20年の特許は過剰です。特許は審査請求に約15万円、登録まで2〜4年、20年で約107万円の年金。実用新案は約2万円、2〜3か月、10年で約9万円。10年後にその構造をまだ使っているか、を製品の寿命から考えてください。使っていないなら、実用新案で十分で、費用は10分の1です。

② 起算日は出願日。ただし、実用新案は「無駄」がほとんどありません。
存続期間は特許も実用新案も出願日起算ですが、特許は審査に2〜4年かかるため、20年のうち実際に権利があるのは16〜18年。実用新案は無審査で2〜3か月で登録されるため、10年のほぼ全部が権利期間です。「特許20年 vs 実用新案10年」は、実質では「16〜18年 vs 9年半」で、差は見た目ほど大きくない。この点も、実用新案を選ぶ判断材料になります。

③ 「3年以内に特許へ変更」の道は、技術評価を請求する前に。
実用新案で出しておいて、売れたら特許に変更する、という戦略は有効ですが、実用新案の技術評価書を請求した後、または実用新案権に基づいて警告した後は、特許への変更ができなくなります。模倣品を見つけて技術評価書を請求すると、その時点で特許への道が閉じる。「20年守る価値が出てきたか」の判断は、技術評価の前に。出願から3年という期限と合わせて、管理してください。

よくある質問

Q. 実用新案権の存続期間は何年ですか。
出願日から10年です(実用新案法15条)。無審査で2〜3か月で登録されるため、実質的な権利期間は約9年半で、特許(20年、実質16〜18年)より起算の無駄が少ない。

Q. 特許との違いは何ですか。
期間は特許20年に対し実用新案10年。対象は物品の形状・構造・組合せに限られ(方法・製法・物質・プログラムは不可)、無審査で登録が早く、費用は10分の1以下。ただし権利行使に技術評価書が要り、減免制度はありません。

Q. 起算日はいつですか。
出願日です。登録日ではありません。ただし登録料(年金)の年分は登録日から数えるので、2つの起算日があります。

Q. 延長できますか。
できません。特許のような延長制度はなく、出願から10年で必ず終わります。10年後も守りたいなら、出願から3年以内に特許出願に変更するか、最初から特許で出願します。

Q. 旧法では6年だったと聞きました。
2005年3月31日以前の出願は出願から6年、2005年4月1日以降の出願は10年です。現在有効な実用新案権はすべて10年の対象です。

Q. 特許に変更できますか。
出願日から3年以内で、技術評価を請求する前、侵害警告をする前なら、特許出願に変更できます。出願日は実用新案の出願日に遡り、特許権はそこから20年。元の実用新案権は放棄します。

Q. 10年で足りる発明とは。
製品寿命が5〜10年の改良品、物品の形状・構造の工夫、数年でモデルチェンジする製品の構造、早く登録の実績が欲しい場合、進歩性が微妙な小改良です。基幹技術・製法・長期のライセンスは特許で。

まとめ

  • 実用新案権は出願日から10年。無審査で登録が早く、実質的な権利期間は約9年半
  • 特許は20年だが審査で2〜4年消費し実質16〜18年。差は見た目ほど大きくない
  • 対象は物品の形状・構造・組合せのみ。費用は特許の10分の1以下(10年で約12万円)。権利行使に技術評価書
  • 登録料は第1〜3年分を出願時に一括。不納で消滅。無効審判で消える割合は特許より高い
  • 延長制度はない。10年後も守るなら3年以内に特許へ変更か、最初から特許
  • 2005年4月以降の出願は10年、それ以前は6年(既に満了)
  • 特許への変更は出願から3年以内・技術評価請求前。出願日は遡り、特許権は元の出願日から20年
  • 10年で足りるかは製品寿命で決める。意匠(25年)との組合せも

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