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特許権の存続期間は?延長手続・期間内に消滅する条件などを解説

特許権の存続期間は、出願日から20年です(特許法67条1項)。登録された日からではなく、出願した日から数えます。

つまり、審査に時間がかかった分だけ、実際に権利を使える期間は短くなります。出願から登録まで3年かかれば、権利を行使できるのは残り17年です。

そして20年を待たずに権利が消えることもあります。年金(特許料)を納めなければ消滅しますし、無効審判で無効にされることもあります。逆に、一定の場合には20年を超えて延長できます。この記事では、起算日、延長できる2つの場合、期間内に消滅する条件を順に説明します。

この記事でわかること
  • 存続期間が「出願日から20年」である意味と、実際に使える期間
  • 20年を超えて延長できる2つの場合(医薬品等と、審査の遅延)
  • 延長登録出願の期限と手続
  • 20年を待たずに権利が消滅する4つの場合
  • 実用新案・意匠・商標の存続期間との比較
  • 期間が切れた後に何が起きるか
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

存続期間は「出願日から20年」

特許法67条1項は、存続期間を特許出願の日から20年をもって終了すると定めています。

起算日は出願日。登録日ではありません。

実際に権利を使える期間は、20年より短い

特許権が発生するのは設定登録の時です。出願から登録までの期間は、権利がまだ存在しません。

期間
出願から審査請求まで最長3年(出願から3年以内に請求しないと取下げ擬制)
審査請求から一次審査までおおむね10〜14か月
拒絶理由への応答・再審査案件による
結果として、登録まで2〜4年程度が一般的

登録まで3年かかれば、権利行使できる期間は17年です。早期審査を使えば登録が早まり、その分だけ権利を使える期間が伸びます。

出願公開との関係

出願は、出願日から1年6か月で公開されます。公開から登録までの間は、権利はまだありませんが、補償金請求権という仕組みがあります。公開後に警告しておけば、登録後に、その間の実施について実施料相当額を請求できます。

20年を超えて延長できる2つの場合

例外的に、20年を超えて延長できる場合が2つあります。性質がまったく違うので、分けて理解してください。

① 安全性の確保等を目的とする法律による処分(67条4項)

医薬品や農薬は、特許を取っても、薬機法や農薬取締法の承認・登録がないと販売できません。その承認を待っている間、特許があっても実施できない。この期間を補うための延長です。

  • 延長できる期間:最大5年
  • 対象:政令で定める処分(薬機法の承認、農薬取締法の登録など)
  • 延長される範囲:処分の対象となった物・用途についてのみ

実質的に、医薬品・農薬業界のための制度です。一般の製品には使えません。

② 審査に時間がかかった場合(67条2項)

2020年3月10日以後の出願に適用される制度です。特許庁の審査が遅れた分を補います。

「出願から5年」または「審査請求から3年」のいずれか遅いほうを超えて特許権の設定登録がされた場合、その超えた期間について延長を請求できます。

  • 請求の期限:特許権の設定登録の日から3か月以内
  • 出願人の責めに帰する期間(応答に要した期間など)は控除されます

この3か月を過ぎると、延長は請求できません。登録の通知が来たときに、延長の要否を判断する必要があります。

登録の通知が届いたら、3か月以内に判断が要ります

2020年3月10日以後の出願で、「出願から5年」または「審査請求から3年」のいずれか遅いほうを超えて登録された場合、その超過分について存続期間の延長を請求できます。ただし請求の期限は設定登録の日から3か月です。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、登録通知書の日付から延長の可否を確認します。該当する案件は、思っているより多くあります。

20年を待たずに消滅する4つの場合

① 特許料(年金)を納付しなかった場合

最も多い消滅原因です。特許権を維持するには、毎年の特許料を納めなければなりません。

年分金額(1年ごと)
第1年〜第3年4,300円+(請求項数×300円)
第4年〜第6年10,300円+(請求項数×800円)
第7年〜第9年24,800円+(請求項数×1,900円)
第10年〜第25年59,400円+(請求項数×4,600円)

年を追うごとに高くなります。これは、使っていない特許を早く手放させる設計です。

納付を忘れても、期限から6か月以内なら追納できます(割増特許料が必要)。それも過ぎると消滅しますが、正当な理由があれば回復の申請ができる場合があります。

② 無効審判で無効にされた場合

無効審決が確定すると、特許権は初めから存在しなかったものとみなされます(遡及効)。過去に受け取ったライセンス料の返還が問題になることもあります。

③ 特許権を放棄した場合

使わない権利を手放す選択です。年金の負担を止められます。

④ 相続人がいない場合

特許権者が死亡し、相続人がいないときは消滅します。

使っていない特許に、年金を払い続けていませんか

特許料は年を追うごとに上がります。第10年以降は59,400円+請求項数×4,600円。請求項が10あれば年10万円を超えます。ところが、その特許がいま何を守っているのかを社内で説明できないという状態は珍しくありません。

初回相談のお申し込みはこちら。保有している権利を棚卸しし、維持するもの・手放すもの・改良して出し直すものに仕分けします。

年金の納付と期限管理を、自社で行うなら
書影

特許料の納付は、ご自身でも行えます。株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)に、様式と申請方法が収められています。

本記事に対応するのは第3編 第3章 第2 特許権です。(1)設定登録(納付期限、納付期限の徒過、納付期限の期間延長)、(2)期間延長請求書、(5)自動納付、(6)特許料納付書、そして(7)期限管理には「(i)登録料支払期限通知サービス」「(ii)Google」と、費用をかけずに期限を管理する方法が具体的に書かれています。

四法の存続期間の比較

権利存続期間起算日更新
特許権20年(延長で最大25年)出願日不可
実用新案権10年出願日不可
意匠権25年出願日(2020年4月1日以後の出願)不可
商標権10年設定登録の日何度でも可

商標だけが更新できます。技術やデザインは一定期間の後に社会のものになる、という考え方が特許・実用新案・意匠に共通しており、商標は「目印」であって独占しても社会の技術進歩を妨げないため、更新が認められています。

意匠との比較で見る、特許の使いどころ

意匠権は出願から25年で、特許より長い。しかも審査が速く、費用も安い。外観で差がつく製品なら、意匠のほうが有利な場面があります。特許は、外観に表れない仕組みを守るための権利だと考えると、使い分けが見えます。

期間が切れると、どうなるか

存続期間が満了すると、その発明は誰でも自由に実施できるようになります。パブリックドメインに入る、という言い方をします。

満了の効果

  • 誰でも製造・販売できる
  • 差止めも損害賠償も請求できない
  • ただし、満了前の行為については、消滅後も損害賠償を請求できます(不法行為の時効の範囲で)

満了に備えてやっておくこと

  1. 改良発明を出願しておく。基本特許が切れても、改良の特許が生きていれば実質的に守れる場面があります
  2. 商標で押さえる。製品名やブランドは商標権で、更新すれば半永久的に維持できます
  3. 意匠で押さえる。外観に特徴があるなら、意匠権のほうが長い

「特許が切れたら終わり」ではなく、切れる前に別の権利に載せ替えるのが実務です。

他社の特許が切れるのを待つ、という戦略

逆の立場では、参入したい分野の特許の満了日を調べておく意味があります。J-PlatPatで存続期間と年金の納付状況を確認できます。年金が納付されずに消滅している特許も少なくありません。

弁理士はここを見ている

① 起算日が出願日である意味を、事業計画に織り込んでください。
「特許は20年」と覚えていると、登録された日から20年あるつもりで事業を計画してしまいます。実際には、登録までにかかった2〜4年は権利のない期間です。製品のライフサイクルが長い分野では、この差が効いてきます。逆算すると、早期審査を使って登録を1年早めることは、権利を使える期間を1年伸ばすことと同じです。費用をかけずにできる(特許庁への追加費用はかかりません)ので、事業化が決まっている案件では積極的に使うべきです。

② 年金は「払い続ける」ものではなく、「毎年判断する」ものです。
特許料は年を追って上がる設計になっています。第10年以降は請求項数によっては年10万円を超えます。これは、使っていない権利を手放させるための仕組みです。ところが実務では、担当者が代わっても納付だけが自動的に続いている会社が少なくありません。年に一度、保有する権利ごとに「いま何を守っているか」「競合はこれを迂回できているか」を確認してください。手放す判断も、知財戦略の一部です。

③ 満了の前に、別の権利へ載せ替える設計をしてください。
特許権は更新できません。だからこそ、切れる前に打つ手を用意しておく必要があります。改良発明を出願して実質的な保護を延ばす、外観に特徴があれば意匠で押さえる、製品名は商標で更新し続ける。とくに商標は、更新すれば半永久的に維持できる唯一の権利です。基本特許が切れた後もブランドで市場を保っている例は多くあります。満了日の数年前ではなく、出願の段階から組み立てておくべき設計です。

よくある質問

Q. 特許権は何年ですか。
出願日から20年です。登録日からではありません。医薬品等の処分による延長(最大5年)と、審査遅延による延長を合わせると、最大で25年程度になる場合があります。

Q. なぜ登録日ではなく出願日から数えるのですか。
出願した時点で、その発明は他人が特許を取れない状態になるためです。登録日起算にすると、審査を意図的に長引かせることで独占期間を伸ばせてしまいます。その代わり、審査が遅れた場合の延長制度(2020年3月10日以後の出願)が設けられています。

Q. 延長登録出願の期限はいつですか。
審査遅延による延長は設定登録の日から3か月以内です。医薬品等の処分による延長は、処分を受けた日から3か月以内(かつ存続期間満了前)です。いずれも期限を過ぎると請求できません。

Q. 年金を払い忘れました。どうなりますか。
納付期限から6か月以内なら追納できます(割増特許料が必要)。それも過ぎると権利は消滅しますが、正当な理由がある場合は回復の申請ができることがあります。まずは期限からの経過日数を確認してください。

Q. 特許が切れたら、誰でも使えますか。
はい。存続期間が満了すると、その発明は誰でも自由に実施できます。ただし満了前の実施行為については、消滅後も損害賠償を請求できます(時効の範囲で)。

Q. 商標のように更新はできますか。
できません。更新できるのは商標権だけです。技術は一定期間の後に社会のものになる、という考え方が特許・実用新案・意匠に共通しています。切れる前に、改良発明・意匠・商標へ載せ替える設計が必要です。

Q. 他社の特許がいつ切れるか調べられますか。
調べられます。J-PlatPatで出願日を確認すれば満了日が計算でき、経過情報から年金の納付状況も確認できます。年金が納付されずに、満了前に消滅している特許も少なくありません。

まとめ

  • 特許権の存続期間は出願日から20年。登録日からではない
  • 登録まで2〜4年かかるため、実際に権利を使える期間はそれだけ短い
  • 延長できるのは2つ。①医薬品等の処分(最大5年)、②審査の遅延(2020年3月10日以後の出願)
  • 審査遅延による延長の請求期限は設定登録の日から3か月
  • 20年を待たずに消滅するのは、年金の不納付・無効審判・放棄・相続人不存在
  • 年金は年を追って高くなる。第10年以降は59,400円+請求項数×4,600円
  • 納付を忘れても6か月以内なら追納できる(割増あり)
  • 更新できるのは商標権だけ。特許は切れる前に別の権利へ載せ替える

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株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著/日本法令/2026年8月刊/A5判568頁/5,500円(税込)/ISBN 978-4-539-73180-2

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