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実用新案権とは?特許権・意匠権との違いと身近な商品の具体例

公開日 2026年10月28日  監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力

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実用新案権とは、物品の形状・構造・組合せに関する「考案」(小さな発明)を、審査なしで登録し、出願から10年間守る権利です。特許が「高度な発明」を実体審査のうえ20年守るのに対し、実用新案は「小発明」を無審査で早く安く守ります。意匠が物品の「見た目」を守るのに対し、実用新案は物品の「構造・仕組み」を守ります。

身近な例では、ペットボトルのキャップの開けやすい形、洗濯ばさみの挟む部分の構造、文房具の使いやすい機構、調理器具の取っ手の取り付け方、収納用品の組合せ構造など、「物の形や構造の工夫」の多くが実用新案の対象です。出願から2〜3か月で登録され、特許庁費用は約2万円。

この記事では、実用新案権の内容、特許権・意匠権との違い(対象・審査・期間・費用・権利行使)、身近な商品の具体例、無審査ゆえの「技術評価書」の仕組み、メリット・デメリット、そして実用新案を選ぶべき場面を説明します。

この記事でわかること
  • 実用新案権の定義と保護対象(物品の形状・構造・組合せに係る考案)
  • 特許権との違い(対象・審査・期間・費用・権利行使の要件)
  • 意匠権との違い(構造か見た目か)
  • 身近な商品の具体例(日用品・文房具・調理器具・工具・収納など)
  • 無審査登録と技術評価書(権利行使の前提・無効時の責任)
  • メリット・デメリット
  • 実用新案を選ぶべき場面と、特許・意匠との組合せ
監修 弁理士(登録番号 19728)・SPECIAL FLOWER特許事務所 代表 下茂 力
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
免責事項 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

実用新案権とは

定義

実用新案法1条・2条:物品の形状、構造又は組合せに係る考案を保護する。「考案」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作(特許の「発明」から「高度のもの」を除いたもの)。

保護対象

対象になる対象にならない
物品の形状(持ちやすい取っ手の形、滑り止めの凹凸)方法(使い方、製造方法、測定方法)
物品の構造(折りたたみ機構、着脱構造、二重構造)化学物質、組成物、材料そのもの
物品の組合せ(複数の部品を組み合わせた道具、セット)プログラム、ソフトウェア
定形のない物(粉、液体、気体)
単なるデザイン(美感だけで技術的効果がない → 意匠)

「物の形・構造・組合せ」で、技術的な効果(使いやすい、壊れにくい、省スペース)があるものが、実用新案です。

権利の内容

実用新案権者は、業として登録実用新案を実施する権利を専有します。実施とは、その物品の製造・使用・譲渡・輸入・譲渡の申出。侵害者に対する差止・損害賠償・刑事告訴は特許と同様ですが、権利行使には技術評価書の提示が要ります(後述)。

特許権との違い

実用新案権特許権
保護対象物品の形状・構造・組合せ(方法・物質・プログラムは不可)発明全般(物・方法・製造方法・物質・プログラム)
創作の高度さ考案(高度でなくてよい)発明(高度なもの)。ただし実務上、進歩性の判断基準は「きわめて容易か」(実用新案)vs「容易か」(特許)の差
審査無審査(形式・基礎的要件のみ)実体審査(新規性・進歩性等)。審査請求が要る
登録まで2〜3か月2〜4年
特許庁費用(出願〜登録)出願14,000円+第1〜3年登録料6,600円(請求項5)=約2万円(出願時に一括)約19万円
存続期間出願から10年出願から20年
維持費(10年累計・請求項5)約9万円約25万円(20年で約107万円)
権利行使技術評価書の提示が必要。無効理由があるのに警告・訴訟をすると損害賠償責任登録後すぐ。無効の抗弁は相手が出す
権利の安定性低い(無審査なので、無効理由を含む権利が多い)高い(審査済み)
減免なしあり
相互の変更出願から3年以内に特許出願へ変更可拒絶査定から3か月以内等に実用新案へ変更可

「特許より弱い」のではなく「審査していない」

実用新案権の効力(差止・損害賠償)自体は特許と同じです。違いは、審査していないので、権利が有効かどうかを、権利行使の前に技術評価書で確認する必要がある点です。技術評価書で「新規性・進歩性あり」と評価されれば、特許に近い強さで行使できます。

意匠権との違い

実用新案権意匠権
守るもの物品の構造・仕組み(技術的効果)物品の見た目(美感)
例:取っ手取っ手が折りたためる機構、力が伝わりやすい構造取っ手の曲線、全体のシルエット
審査無審査実体審査(新規性・創作非容易性)
登録まで2〜3か月6〜8か月
期間出願から10年出願から25年
費用(出願〜登録)約2万円約4万円
効力の判断請求項の構成要件を備えるか見た目が類似するか
模倣への効き方見た目を変えても構造が同じなら止められる構造が違っても見た目が似ていれば止められる

同じ物品で両方

折りたたみ椅子なら、折りたたみ機構は実用新案、椅子の形は意匠。両方に出願すれば、構造の模倣も見た目の模倣も止められます。合計約6万円、いずれも半年以内に登録。

実用新案登録出願の書類と、技術評価の請求
書影

実用新案は、四法の中で最も自力出願に向いた手続です。株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)の第3編 第2章 第2 実用新案に、実用新案登録願・明細書・実用新案登録請求の範囲・図面の様式と記入例、出願時の登録料の一括納付、実用新案技術評価請求書の書き方が収められています。

第1編には特許・実用新案・意匠の使い分け(物品の構造か、方法か、見た目か)、第4編 第1章 第2 実用新案権には権利行使の前提としての技術評価と、特許への変更の判断が書かれています。

身近な商品の具体例

実用新案として登録されている(または登録されうる)考案の例です。「物の形・構造・組合せ」で「技術的効果」があるものです。

分野例技術的効果
日用品ペットボトルのキャップの滑り止め形状、洗濯ばさみの挟持部の構造、ハンガーの肩の形状、傘の骨の接続構造開けやすい、外れにくい、型崩れしない、壊れにくい
文房具消しゴムのケースの構造、ペンのクリップの形状、付箋の粘着部の配置、ファイルの綴じ具折れにくい、挟みやすい、剥がしやすい
調理器具フライパンの取っ手の着脱構造、まな板の滑り止め、おろし器の刃の配置、保存容器の密閉構造収納しやすい、安全、効率的、漏れない
工具・作業用品ドライバーのグリップの形状、脚立の滑り止め、工具入れの仕切り構造、作業手袋の滑り止めの配置力が伝わる、安全、整理できる
収納・家具組立式棚の連結構造、引き出しのストッパー、折りたたみ机の脚の構造、仕切り板の組合せ簡単に組める、飛び出さない、省スペース
健康・介護杖の先端の構造、手すりの取り付け構造、クッションの形状滑らない、取り付けやすい、体圧分散
スポーツ・趣味釣り具の仕掛けの構造、グリップの形状、収納ケースの仕切り絡まない、握りやすい
農業・園芸プランターの排水構造、支柱の連結具、収穫用の器具の形状根腐れしない、組みやすい
包装箱の折り方の構造、緩衝材の形状、開封しやすい切り込みの配置組立が簡単、保護、開けやすい

共通点

画期的な技術ではなく、「ちょっとした工夫」で、製品の使い勝手が変わるもの。製造現場・販売現場の改善提案から生まれることが多く、製品寿命も5〜10年程度。実用新案の10年と、無審査・低費用が合っています。

「特許にするほどではない」工夫は、実用新案の対象です

製造現場の改善、製品の使い勝手の工夫、部品の取り付け方の変更。「特許は大げさ」と思って何も出願していない小さな工夫が、実用新案なら約2万円・2〜3か月で登録され、10年間、模倣を抑止します。「登録実用新案」の表示は、取引先への信用にもなります。特許を検討して見送った発明が、社内に眠っていませんか。

SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、製品や現場の工夫をうかがい、実用新案の対象になるか、特許・意匠とどう組み合わせるか、費用の総額をお示しします。

無審査登録と技術評価書

無審査の意味

実用新案は、新規性・進歩性を審査せずに登録されます。だから、先行技術があっても登録され、登録されたからといって有効とは限りません。

技術評価書(29条の2・12条)

権利者が侵害者に権利行使(警告・訴訟)するには、特許庁に「実用新案技術評価」を請求し、その評価書を提示して警告しなければなりません。

項目内容
誰が請求できるか何人も(権利者でも、第三者でも)
費用42,000円+1,000円×請求項数
期間請求から2〜3か月
内容審査官が先行技術を調査し、新規性・進歩性等について評価(評価1〜6。6が「新規性・進歩性あり」)
効果法的拘束力はないが、権利行使の前提。評価が低ければ、権利行使しないのが賢明

権利者の責任(29条の3)

技術評価書を提示して警告・権利行使した後、その実用新案が無効になった場合、権利者は相手に与えた損害を賠償する責任を負います(技術評価書で否定的評価だったのに行使した場合など。相当の注意をもって行使した場合は免責)。「無審査で登録された権利を、無効だと知りつつ振り回す」ことを防ぐ仕組みです。

第三者による技術評価請求

競合の実用新案が事業の障害になるとき、第三者が技術評価を請求して、無効理由の有無を確認できます。評価が低ければ、無効審判で消すか、無視して実施する判断ができます。

メリット・デメリット

メリットデメリット
早い:2〜3か月で登録。「登録実用新案」と表示できる権利が不安定:無審査なので無効理由を含む権利が多い
安い:出願〜登録約2万円、10年で約12万円権利行使に技術評価書が要る:42,000円+α、2〜3か月
審査請求不要:3年の期限管理がない無効時の賠償責任:軽率な権利行使は危険
小さな工夫が権利になる:進歩性のハードルが特許より低い(「きわめて容易」でなければ)10年で終わる:延長なし
3年以内に特許へ変更可:様子を見てから格上げ方法・物質・プログラムは不可
取引先・補助金・融資の「登録」実績減免なし(もともと安い)
公開は登録時(出願公開制度なし)登録が早い分、公開も早い

「登録実用新案」表示の効果

製品やカタログに「登録実用新案第〇〇号」と表示すると、模倣の抑止と、取引先への信用になります。無審査であることを知らない模倣者には、特許と同じ抑止力があります。

実用新案で警告する前に、技術評価書を

実用新案は無審査なので、登録されていても無効理由を含んでいることが多く、技術評価書なしで警告すると、無効になったときに逆に損害賠償責任を負います。模倣品を見つけたら、まず技術評価を請求し(42,000円+α、2〜3か月)、評価を見てから権利行使するか決める。逆に、他社の実用新案で困っているなら、第三者として評価を請求して無効理由を確認できます。

初回相談のお申し込みはこちら。自社の実用新案と模倣品、または他社の実用新案と自社製品をお持ちいただければ、技術評価の見込みと、権利行使または対抗の方針をお示しします。

実用新案を選ぶべき場面

実用新案が向く特許が向く
物品の形状・構造・組合せの工夫方法・製法・物質・プログラム
製品寿命が5〜10年20年守る基幹技術
特許にするには進歩性が微妙な小改良進歩性が明確
早く「登録」の実績が欲しい時間をかけても強い権利が欲しい
費用を最小に(約2万円)費用より権利の安定性
模倣品と本気で争う予定は薄い(抑止が主目的)侵害訴訟を想定
まず出して、売れたら3年以内に特許へ変更最初から特許

組合せ

  • 実用新案+意匠:構造と見た目の両方。合計約6万円、半年以内。日用品・雑貨・家具に最適
  • 実用新案→特許への変更:出願から3年以内、技術評価請求前。売れ行きを見てから格上げ
  • 実用新案+商標:製品の構造と名前

迷ったら

物品の形状・構造か → No → 特許
→ Yes → 10年後も使うか、本気で権利行使するか → Yes → 特許(または実用新案で出して3年以内に変更)
→ No → 実用新案(+意匠)

弁理士はここを見ている

① 実用新案は「特許の劣化版」ではなく、「小発明のための別の制度」です。
実用新案のご相談で、「特許が取れないから仕方なく」という認識の方がいますが、製品寿命が10年以内の物品の構造の工夫に、特許(2〜4年・約19万円・20年の年金)は過剰で、実用新案(2〜3か月・約2万円・10年)が合っています。日用品・文房具・調理器具・工具・収納の「ちょっとした工夫」は、まさにこの制度のためにある。「特許にするほどか」で迷う発明は、実用新案で出す。売れて20年守る価値が出たら、3年以内に特許へ変更する道もあります。

② 無審査だから、権利行使の前に「技術評価書」。これを飛ばすと逆に賠償責任です。
実用新案権で模倣品に警告したいというご相談で、技術評価書を請求せずに警告書を出そうとしているケースがあります。実用新案法は、評価書の提示を権利行使の要件にし、無効になった場合の賠償責任を権利者に課しています。まず技術評価を請求し(2〜3か月)、評価6(新規性・進歩性あり)なら警告、評価が低ければ権利行使を控えて設計変更や意匠で守る。この順序を守れば、実用新案は特許に近い抑止力を持ちます。

③ 日用品・雑貨は、実用新案と意匠のセットが最も費用対効果が高い。
日用品・雑貨・家具のご相談で、特許だけを検討して費用で見送る方が多いのですが、実用新案(構造・約2万円・2〜3か月)と意匠(見た目・約4万円・6か月)を組み合わせれば、合計約6万円・半年以内で、構造の模倣も見た目の模倣も止められます。この分野の模倣品は「見た目をそっくりに、構造も同じに」が多いので、両方で押さえると効きます。特許1件の費用で、実用新案と意匠を3組出せる。製品の性質で、この組合せを選んでください。

よくある質問

Q. 実用新案権とは何ですか。
物品の形状・構造・組合せに関する考案(小さな発明)を、無審査で登録し、出願から10年間守る権利です。特許より早く(2〜3か月)安く(約2万円)、権利行使には技術評価書が要ります。

Q. 特許権との違いは。
対象が物品の形状・構造・組合せに限られ(方法・物質・プログラムは不可)、無審査で登録が2〜3か月、費用は約2万円、期間は10年、権利行使に技術評価書の提示が必要で、無効時に賠償責任を負うことがあります。特許は審査あり・2〜4年・約19万円・20年です。

Q. 意匠権との違いは。
実用新案は物品の構造・仕組み(技術的効果)、意匠は物品の見た目(美感)を守ります。折りたたみ椅子なら、機構は実用新案、形は意匠。両方に出願すれば、構造の模倣も見た目の模倣も止められます。

Q. 身近な商品の例は。
ペットボトルのキャップの滑り止め形状、洗濯ばさみの構造、フライパンの取っ手の着脱構造、保存容器の密閉構造、組立式棚の連結構造、ドライバーのグリップ形状など、物の形・構造の「ちょっとした工夫」で使い勝手が変わるものです。

Q. 技術評価書とは何ですか。
特許庁の審査官が、登録実用新案の新規性・進歩性などを先行技術調査のうえ評価した書面です(42,000円+1,000円×請求項、2〜3か月)。権利行使にはこの提示が必要で、第三者も請求できます。

Q. メリット・デメリットは。
メリットは早い・安い・審査請求不要・小さな工夫が権利に・3年以内に特許へ変更可・登録表示の抑止力。デメリットは権利が不安定・権利行使に技術評価書・無効時の賠償責任・10年で終了・方法等は不可。

Q. どんなときに実用新案を選ぶべきですか。
物品の形状・構造・組合せの工夫で、製品寿命が5〜10年、進歩性が微妙な小改良、早く登録実績が欲しい、費用を最小に、抑止が主目的、の場合です。意匠との組合せ(合計約6万円・半年以内)が日用品・雑貨に最適です。

まとめ

  • 実用新案権は物品の形状・構造・組合せの考案を、無審査で、出願から10年守る権利
  • 特許との違い:対象が物品の構造に限定、無審査・2〜3か月・約2万円、権利行使に技術評価書、無効時の賠償責任
  • 意匠との違い:構造か見た目か。同じ物品で両方に出願できる
  • 身近な例:キャップの滑り止め、洗濯ばさみ、取っ手の着脱、密閉容器、組立棚、グリップ形状
  • 無審査ゆえ、権利行使の前に技術評価(42,000円+α)。評価が低ければ行使しない
  • メリットは早い・安い・小さな工夫が権利に・3年以内に特許へ変更可。デメリットは不安定・10年・方法不可
  • 向くのは製品寿命5〜10年の物品の工夫。実用新案+意匠で約6万円・半年以内が日用品・雑貨に最適
  • 「特許にするほどか」で迷う発明は実用新案で出す

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