特許の取り方は?申請から登録までの流れを徹底解説
特許を取るには、出願 → 審査請求 → 審査 → 登録という4つの段階を踏みます。商標や意匠と違うのは、出願しただけでは審査が始まらない点です。別に「審査請求」をしなければ、3年後に取り下げたものとみなされます。
全体でかかる期間は、通常2〜4年。費用は、特許庁への分だけで20万円前後、弁理士に依頼すると50万〜100万円が目安です。
この記事では、申請から登録までの流れを段階ごとに追いながら、各段階の期限と費用が発生するタイミング、そして最も失敗が多い箇所を説明します。
- 出願から登録までの4段階と、それぞれの期間・費用
- 審査請求を忘れるとどうなるか(3年の期限)
- 出願書類4点の役割と、いちばん重要な書類
- 拒絶理由通知への対応と、応答期限
- 特許を取るための要件(新規性・進歩性など)
- 費用の総額と、抑える方法
長岡技術科学大学大学院修士課程修了。2001年国内特許事務所入所、2013年弁理士試験合格、2015年群馬工業高等専門学校非常勤講師、2026年SPECIAL FLOWER特許事務所設立。特許事務所において20年以上、電子デバイス・機械要素を中心に国内外の特許出願・拒絶理由対応に従事。この記事は、上記の弁理士が内容を確認しています。
特許を取るまでの全体像
| 段階 | やること | 期限 | 特許庁への費用 |
|---|---|---|---|
| ① 調査 | 先行技術を調べる | — | 無料 |
| ② 出願 | 願書・明細書等を提出 | — | 14,000円 |
| ③ 審査請求 | 審査を求める | 出願から3年以内 | 138,000円+請求項数×4,000円 |
| ④ 審査 | 審査を待つ。拒絶理由が来たら応答 | — | 0円 |
| ⑤ 登録 | 特許査定後、30日以内に特許料を納付 | 30日 | 第1〜3年分 |
出願から1年6か月で公開されます
審査の途中でも、出願から1年6か月が経つと出願内容が公開されます。これは登録されるかどうかに関係なく行われます。つまり、特許が取れなくても、技術は世の中に公開されます。
この点は、出願するかどうかの判断に直結します。秘密にしておいたほうがよい技術(製造方法など、外から見て分からないもの)は、出願しないという選択もあります。
期間の目安
- 出願 → 審査請求:最長3年(すぐ請求することも可能)
- 審査請求 → 一次審査:おおむね10〜14か月
- 拒絶理由への応答 → 再審査:数か月
- 合計で2〜4年が一般的
急ぐ場合は早期審査があり、要件を満たせば審査請求から2〜3か月で結果が出ます。特許庁への追加費用はかかりません。
① 調査 ── 出願前に先行技術を調べる
特許が認められるには、その発明がまだ知られていないこと(新規性)と、既知の技術から容易に考えつくものでないこと(進歩性)が必要です。
出願前に、同じ・似た技術が既に公開されていないかを調べます。J-PlatPatで無料でできます。
調べ方の目安
① 自分の発明を、技術用語で3〜5語に分解する
② J-PlatPatの特許・実用新案検索で、その語の組み合わせで検索する
③ ヒットした公報の「特許請求の範囲」を読み、自分の発明と何が違うかを書き出す
④ 違いが「効果のある違い」かどうかを考える
④が難しい。単に部品を置き換えただけ、寄せ集めただけでは進歩性が認められません。その違いによって、予測できない効果が出ているかどうかが問われます。
調査を省くとどうなるか
審査請求料は138,000円+請求項数×4,000円です。請求項が5つなら158,000円。これは、拒絶されても戻ってきません。調査にかける時間のほうが、はるかに安い。
広く書けば先行技術にぶつかって拒絶され、狭く書けば登録されても他社が回避できる。この綱引きが明細書作成の本体です。そして、出願後に明細書へ新しい内容を追加することはできません(新規事項追加の禁止)。つまり、出願時に書いていないことは、後から権利にできません。
SPECIAL FLOWER IP LAW FIRM の初回相談では、発明の内容をうかがい、どこまで広く書けるか、何を明細書に残しておくべきかを整理します。
② 出願 ── 4つの書類
特許出願に必要な書類は4つです。
| 書類 | 役割 | 重要度 |
|---|---|---|
| 特許請求の範囲 | 権利の範囲そのものを定める | 最重要 |
| 明細書 | 発明の内容を第三者が実施できる程度に説明する | 重要 |
| 図面 | 発明の理解を助ける(任意だが、通常は添付) | — |
| 要約書 | 技術情報として公開するための要約 | 権利範囲には影響しない |
| 願書 | 出願人・発明者などの手続上の情報 | — |
特許請求の範囲が、すべてを決めます
特許権の範囲は、特許請求の範囲の記載によって定まります(特許法70条1項)。明細書にどれだけ詳しく書いても、特許請求の範囲に書いていなければ権利になりません。
広く書けば、先行技術にぶつかって拒絶される。
狭く書けば、登録されるが、他社は少し変えるだけで回避できる。
この綱引きが、明細書作成の本体です。ここを外すと、登録はされたが誰も止められない権利ができます。
明細書には「実施可能要件」があります
明細書は、その分野の通常の知識を持つ人が、読んで実施できる程度に書かなければなりません(特許法36条4項1号)。抽象的に書くと、この要件で拒絶されます。
出願費用
14,000円です。書面で出す場合は、電子化手数料(1件1,200円+書面1枚につき700円)が加わります。特許の書類は枚数が多いため、書面出願では1万円前後かかることもあります。

特許の出願書類は、ご自身でも作成できます。株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著『自分でできる 特許(実用新案・意匠・商標)出願の手続きと活かし方』(日本法令・568頁)に、記入例つきで収められています。
本記事に対応するのは第3編 第2章 第1 特許です。(1)特許願には、(ii)効率的な書類を書く順番、(iii)特許請求の範囲、(iv)明細書、(v)クレームコピー、(vi)要約書、(vii)図面、(viii)願書という項が並びます。(3)出願審査請求書、(4)早期審査に関する事情説明書、(7)手続補正書、(8)意見書の様式と記入例も同章にあります。
③ 審査請求 ── 忘れると3年で消えます
ここが、特許と他の権利の最大の違いです。
特許は、出願しただけでは審査されません。別に「出願審査請求書」を提出する必要があります。
| 内容 | |
|---|---|
| 期限 | 出願の日から3年以内 |
| 請求できる人 | 誰でも(出願人以外も可) |
| 費用 | 138,000円+(請求項数×4,000円) |
| 忘れると | 出願が取り下げられたものとみなされる |
3年を過ぎると、その出願は消えます。復活させる方法は、原則としてありません。
なぜ3年の猶予があるのか
出願した時点では、その技術が事業になるか分からないことが多い。3年のあいだに市場を見て、事業化しそうなら審査請求する、という判断ができる制度です。
審査請求料は十数万円と高額なので、この猶予は費用面でも意味があります。
実務での使い方
- すぐ事業化する → 出願と同時に審査請求
- 市場を見たい → 出願だけして様子を見る。他社への牽制効果は出願だけでもある
- 3年経つ前に判断 → 事業化しないなら請求しない(費用が浮く)
この「請求しない」という判断も、立派な知財戦略です。ただし、期限の管理が前提になります。
応答期限は原則60日です。何もしなければ拒絶査定になります。そして、意見書で反論するか、手続補正書で請求範囲を限定するかの選択が、その後の権利範囲をそのまま決めます。限定しすぎれば他社を止められず、粘りすぎれば登録が遠のく。
初回相談のお申し込みはこちら。通知書と引用例をお持ちいただければ、残り期間と取れる手を整理します。
④ 審査 ── 拒絶理由通知への対応
審査で問題がなければ、そのまま特許査定です。ただし、一次審査で特許査定になる割合は高くありません。多くは拒絶理由通知が来ます。
拒絶理由通知は不合格通知ではありません
「このままでは特許にできない理由があるので、反論または補正をしてください」という通知です。
| 主な拒絶理由 | 条文 | 対応 |
|---|---|---|
| 新規性がない | 29条1項 | 補正で限定する/引用例との違いを主張 |
| 進歩性がない | 29条2項 | 最も多い。効果の違いを主張/補正で限定 |
| 記載が不明確 | 36条6項2号 | 補正で明確にする |
| 実施可能要件違反 | 36条4項1号 | 主張・補正 |
| サポート要件違反 | 36条6項1号 | 補正で請求範囲を明細書の記載に合わせる |
応答期限
原則60日(在外者は3か月)です。延長も可能で、1回目の請求で2か月、2回目でさらに1か月(手数料2,100円/通)。期限内に応答しないと、拒絶査定になります。
応答の方法
- 意見書:引用例との違いを主張する
- 手続補正書:特許請求の範囲を限定する
補正には制限があります。出願当初の明細書等に書いていないことは追加できません(新規事項追加の禁止)。だから、明細書に何を書いておくかが、後の補正の自由度を決めます。
拒絶査定になったら
謄本の送達から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求できます。3人の審判官の合議体が審理します。
⑤ 登録と、その後の費用
特許査定の謄本が届いたら、送達から30日以内に第1年から第3年分の特許料を納めます。
| 年分 | 年あたりの特許料 |
|---|---|
| 第1年〜第3年 | 4,300円+(請求項数×300円) |
| 第4年〜第6年 | 10,300円+(請求項数×800円) |
| 第7年〜第9年 | 24,800円+(請求項数×1,900円) |
| 第10年〜第25年 | 59,400円+(請求項数×4,600円) |
年を追うごとに上がります。使わない権利を早く手放させる設計です。
総額の目安(請求項5つ、弁理士に依頼した場合)
| 項目 | 特許庁 | 弁理士 |
|---|---|---|
| 出願 | 14,000円 | 25万〜50万円 |
| 審査請求 | 158,000円 | 1万〜3万円 |
| 拒絶理由への応答(1回) | 0円 | 8万〜20万円 |
| 登録(第1〜3年分) | 17,400円 | 5万〜10万円 |
| 合計 | 約19万円 | 約40万〜80万円 |
減免制度があります
中小企業・小規模企業・個人事業主などは、審査請求料と第1年〜第10年の特許料が2分の1または3分の1に軽減されます。証明書の提出は不要で、申請書に記載するだけです。使える方が使っていない例が非常に多い制度です。
① 審査請求の3年は、「待つ」ためではなく「決める」ためにあります。
出願から3年という猶予は、事業化の見通しを見るための期間です。ところが実務では、「まだ決められないから」と先延ばしにして、3年目に慌てて請求するケースが多い。それでは猶予の意味がありません。正しい使い方は、1年目・2年目に市場と競合を見て、請求するかしないかを能動的に決めることです。請求しないという判断も戦略です。158,000円が浮き、その分を別の出願に回せます。期限管理と、年に一度の棚卸しをセットにしてください。
② 出願時に書いていないことは、後から権利にできません。
補正には新規事項追加の禁止という制限があります。出願当初の明細書・特許請求の範囲・図面に書いていない内容は、後から追加できません。これが意味するのは、拒絶理由通知が来たときに逃げ込める場所は、出願時点で全部決まっているということです。だから明細書には、いま権利にするつもりのない変形例まで書いておきます。実施例を1つしか書いていない明細書は、拒絶理由が来たときに打つ手がありません。ここが、書き手の経験が最も出る部分です。
③ 減免制度を使っていない中小企業が、非常に多い。
中小企業・小規模企業・個人事業主などは、審査請求料と第1年〜第10年の特許料が2分の1または3分の1に軽減されます。審査請求料158,000円が約53,000円になる計算です。証明書の提出は不要で、申請書に記載するだけ。それにもかかわらず、使っていない出願を実際に見ます。自分で出願される方はもちろん、他の事務所に依頼していて適用されていない場合もあります。納付書の控えを一度確認してみてください。
よくある質問
Q. 特許を取るまで、どのくらいかかりますか。
通常2〜4年です。出願から審査請求までが最長3年、審査請求から一次審査までが10〜14か月、拒絶理由への対応でさらに数か月。早期審査を使えば、審査請求から2〜3か月で結果が出ます。
Q. 費用はいくらかかりますか。
請求項5つで、特許庁への費用が約19万円(出願14,000円+審査請求158,000円+登録17,400円)。弁理士に依頼すると、これに40万〜80万円程度が加わります。中小企業等の減免制度を使えば、審査請求料と特許料が2分の1または3分の1になります。
Q. 審査請求をしないと、どうなりますか。
出願から3年を過ぎると、出願が取り下げられたものとみなされます。復活させる方法は原則としてありません。ただし、出願から1年6か月で内容は公開されるため、他社もその技術で特許を取れなくなります。
Q. いちばん重要な書類はどれですか。
特許請求の範囲です。特許権の範囲は、この記載によって定まります(特許法70条1項)。明細書にどれだけ詳しく書いても、特許請求の範囲に書いていなければ権利になりません。
Q. 拒絶理由通知が来ました。もう無理ですか。
いいえ。多くの出願で拒絶理由通知は届きます。意見書で引用例との違いを主張する、手続補正書で請求範囲を限定する、という対応で登録に至る例は多い。応答期限は原則60日です。
Q. 自分で出願できますか。
できます。特許庁も個人の出願を想定しています。ただし、特許請求の範囲の書き方で権利の価値が決まり、出願時に書いていないことは後から追加できません。事業の中心になる発明であれば、専門家に依頼することをお勧めします。
Q. 出願すると、技術が公開されてしまいますか。
はい。出願から1年6か月で公開されます。特許が取れるかどうかに関係なく公開されます。製造方法のように外から分からない技術は、出願せず営業秘密として秘匿する選択もあります。
まとめ
- 特許は出願 → 審査請求 → 審査 → 登録の4段階。通常2〜4年
- 出願しただけでは審査されない。出願から3年以内に審査請求が必要
- 3年を過ぎると出願は取り下げたものとみなされ、復活できない
- 特許請求の範囲が権利の範囲を決める。最も重要な書類
- 出願から1年6か月で内容が公開される(登録の可否にかかわらず)
- 拒絶理由通知の応答期限は原則60日。延長は可能
- 出願時に書いていないことは、後から権利にできない(新規事項追加の禁止)
- 特許庁への総額は約19万円。中小企業等の減免で大きく下がる
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四法(特許・実用新案・意匠・商標)の出願書類の様式と記入例、費用の削減、権利の活かし方までを1冊にまとめた手引きです。著者は当事務所とは別組織の会社の代表ですが、自分で出願を進めたい方に、当事務所の初回相談でもお勧めしています。
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株式会社SPECIAL FLOWER COMPANY 代表取締役会長 井澤 佑斗 著/日本法令/2026年8月刊/A5判568頁/5,500円(税込)/ISBN 978-4-539-73180-2
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