top of page

特許や商標手続きの内製化で削減できる費用と着手しやすい分野・実務上の注意点を解説

「特許や商標などの知的財産手続きは自社で内製化できますか?どの手続きから始めるべきですか?」という疑問にお答えします。

特許庁への電子申請体制を整えることで、各種手続きは自社で内製化が可能です。まずは書式が決まっている「登録料の納付」や、書類が比較的少ない「意匠登録出願」「商標登録出願」など、取り組みやすい分野から順次内製化を進めるのが実務的です。


01|知的財産手続きを内製化するメリットとコスト削減の概要


知的財産権の手続きにおける「内製化」とは、出願や権利維持、異議申立などの各種実務を外部の任意代理人に全面的に依存せず、自社で直接行うことを指します。

内製化の最大のメリットの一つは、外部へ委託する費用の大幅な削減(コストカット)です。一般的な実務慣行として、特許出願を任意代理人に外注した場合、特許願の作成と出願で1件あたり25万円から60万円程度の費用が発生します。さらに、特許庁からの拒絶理由通知に対する中間応答に10万円から20万円、設定登録時の成功報酬に10万円から20万円がかかり、1件の特許を取得するまでに総額50万円から100万円程度の外注コストを要します。

例えば、企業が10件の特許出願を内製化した場合、自社の人件費等を考慮しても年間で450万円から1,000万円規模のコストカットを実現できる計算になります。個人発明家の場合であっても、45万円から100万円程度の出願費用を削減できるため、大きな金銭的負担軽減につながります。

また、内製化にはコスト削減だけでなく「作業の速さ」と「質の向上」というメリットもあります。外注する場合、仮案の作成までに1か月から2か月程度の期間を要し、修正のやり取りでさらなる遅延が生じることがあります。激しい技術開発競争においては、出願の遅れが命取りになりかねません。自社で手続きを行えば、発明の発生から即日で電子出願を完了させることも可能になります。さらに、出願から中間対応、権利維持までの一連の実務を社内に蓄積することで、知財戦略全体の質を高める効果が期待できます。


02|内製化を着手しやすい分野と訓練が必要な分野


知財実務の内製化を進めるにあたっては、すべての手続きを一度に自社対応するのではなく、難易度やリスクに応じた段階的な導入が推奨されます。


比較的着手しやすい分野


実務上、比較的スムーズに自社対応へ移行できる分野には以下の手続きが挙げられます。

1. **権利維持のための登録料の納付** 特許料や実用新案・意匠・商標の設定登録料の納付は、書式が明確に定められており、誰が作成しても同様の内容になります。また、登録特許や意匠、商標には「自動納付制度」が用意されており、一度登録すれば毎年自動で納付が処理されます。1件ごとに発生していた納付委託手数料をゼロにできるため、費用対効果が高い分野です。

2. **意匠登録出願** 意匠登録出願は、製品の形状等を表す図面(6面図等)が準備できれば、願書の作成自体は比較的シンプルです。図面作成には製図ソフトのほか、無地の背景を用いてスマートフォンで6方向から実物を撮影した写真を使用することや、AIを活用することも可能です。万が一、手続き上の不備で拒絶査定となった場合でも出願公開はされないため、致命的な失敗になりにくく、再挑戦がしやすい特徴があります。印紙代も16,000円と比較的低抑えです。

3. **商標登録出願** 商標登録出願は、他の知的財産権と比べて提出書類が少ない手続きです。「指定商品・指定役務」の選定に迷う場合は、あらかじめ多めに記載して出願し、拒絶理由通知で指定の範囲が問題となった段階で不要な指定商品等を削除・修正するアプローチも取れます。印紙代は1区分で12,000円(3,400円+8,600円)から申請可能です。


一定の訓練と経験が必要な分野


一方で、以下の分野については専門的な知見や訓練が必要となります。

- **特許出願の請求項(クレーム)の設計**:競合他社の侵害を適切に検知できる「検知容易性」の確保や、広い権利範囲を確保するための「上位概念化」の技術が必要です。 - **拒絶理由通知への中間対応**:特許庁の審査官による審査基準の適用に対し、補正や意見書で特許の独占範囲を維持したまま登録へ導く高度な判断力と実務経験が求められます。 - **争訟および上流戦略**:警告状の送付や訴訟、不正競争防止法との兼ね合い、自社の強みを分析して事業展開と連動させる知財上流戦略の策定には、深い法的手続きの理解が必要です。


03|実務上の注意点と確認すべき事項


知財手続きの内製化を安全かつ円滑に進めるためには、事前の体制整備と確認事項の洗い出しが重要です。


電子申請環境の準備


特許庁への手続きを自社で行うには、特許庁が提供する「電子出願ソフト」を導入し、電子申請の環境を構築します。電子出願ソフトはWindows対応のため、Windows端末を用意します。Macを使用する場合は仮想空間(Parallels等)での動作が可能ですが、特許庁の動作保証外であるため、トラブルに備えて予備のWindows端末を確保しておくことが推奨されます。また、電子署名に必要なマイナンバーカード(個人)や商業登記電子証明書(法人)、対応するICカードリーダーを用意します。


社内ガバナンスと期限管理


法人の場合、商業登記電子証明書や識別番号の管理権限、証明書ストアの設定(PC限定タイプ等)を明確にし、セキュリティとガバナンスを確保します。また、登録料の納付期限や拒絶理由通知への応答期限など、期日管理の社内フローを確実に構築してください。


専門家への相談とサポートの活用


内製化を進める中で、請求項の設計や高度な中間対応、他社との紛争・警告への対応など、自社内だけでの判断が難しい場面に直面することがあります。自社の強みを最大限に活かした知財戦略を構築するためにも、必要に応じて弁理士などの専門家へ相談することを検討すると安心です。自社の体制に合った内製化の範囲や知財活用についてお悩みの方は、ぜひ初回相談をご活用ください。


関連サービス



ご相談



監修


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な案件については当事務所へご相談ください。当事務所は本文書または本文書掲載の情報の利用によって利用者等に何らかの損害が発生したとしても、かかる損害については一切の責任を負うものではありません。

bottom of page