識別番号とは|取得と登録の方法
特許庁へ特許や意匠、商標などの申請を行う際、非常に重要となるのが「識別番号」の取得です。識別番号は、特許庁に対して手続きを行うすべての申請者に必要となる固有の番号です。中小企業の担当者や、これから実務を自ら行う実務家にとって、この識別番号を正しく取得し、登録することは、オンラインでの電子申請(インターネット出願)をスムーズに開始するための第一歩となります。電子申請には、申請料金が安くなるなど多くのメリットがあります。ここでは、識別番号の役割や、取得から登録までに必要な具体的な準備と手順について、分かりやすく解説します。
識別番号とは|なぜ取得が必要なのか
識別番号とは、特許庁への手続きを行う者に対して、特許庁長官が付与する9桁のアラビア数字からなる固有の番号です。特許や意匠、商標などの出願、中間対応、登録料の支払いなど、特許庁に対するさまざまな手続きをインターネット経由で電子申請(電子出願)する際に、本人認証を行うために不可欠な情報となります。
電子申請を行うためには、事前にこの「識別番号」を取得し、さらに「電子証明書」と組み合わせた状態で特許庁へ申請人利用登録を完了させておく必要があります。これにより、インターネットを通じた安全な本人認証が可能になり、自宅や会社のパソコンから時間や場所を問わずに手続きを進めることができます。統計によれば、2026年時点の特許の電子出願率は99%に達しており、ほとんどの手続きが電子申請されています。
電子申請を利用せず、特許庁へ書面を郵送したり特許庁の窓口(東京都千代田区霞が関)へ持参して提出したりする方法もありますが、この書面申請を行う人の割合は統計的にはごくわずかです。書面申請には多大なコストと手間がかかります。書面申請を行う場合、提出された紙の書類を電子データ化するための「電子化手数料」の納付が義務づけられています。この手数料は、手続き1件につき2,400円に加え、書面1枚につき800円が加算される仕組みです。例えば、特許出願の出願審査請求書(1枚)と同時に手続補正書(2枚)を書面で提出する場合、合計で7,200円の電子化手数料が余計にかかってしまいます。さらに、電子化手数料を支払わなければ手続きが却下されるため、不利益が生じるリスクもあります。識別番号を取得して電子申請を行うことは、これらの余計なコストを削減し、迅速かつ確実に手続きを完了させるために必須の手順と言えます。
識別番号の取得・登録前に必要なパソコンと環境の準備
識別番号の取得や登録は、特許庁が提供する「電子出願ソフト」という専用のアプリケーションをパソコンにインストールして行います。この環境構築には思わぬ時間がかかる場合があるため、前もって準備を整えておくことをお勧めします。準備に必要なものは以下の通りです。
1. コンピューター(パソコン)の用意
電子出願ソフトは、Windows OSのみに対応しています。そのため、以下のスペックや環境を満たすパソコンが必要です。
- Windows搭載パソコン:特許庁はWindows版の電子出願ソフトを提供しているため、最新のOSであれば問題なく動作します。Microsoft社の古いOSでサポートが終了したものは、特許庁のサポートも終了し、電子申請ができなくなるため、必ず最新のOSにアップデートしておいてください。
- Macを使用する場合:Mac上でWindows仮想空間を用いて動作させます。インテルプロセッサ搭載のやや古いMacモデル(MacBook 2015から2017年モデル、MacBook Air 2012から2020年モデル(M1を除く)、MacBook Pro 2012から2020年モデル(M1を除く)、Mac mini 2012から2018年モデル、iMac 2012から2020年モデル、iMac Pro全モデル、Mac Pro 2013年から2019年モデルなど)では、Bootcampを用いてWindows仮想空間を構築します。また、Mチップ搭載の新しいMacではBootcampが使えないため、Microsoft社公認の「Parallels」というソフト(定価11,500円/年程度)を使用してWindows仮想空間を構築します。
- Mac利用時の注意点:Mac上のWindows仮想環境での動作について、特許庁は動作保証をしていません。アップデート等の要因で突然利用できなくなるリスクに備え、万が一の際にはWindows搭載の予備パソコンでも申請ができる2台体制を整えておくことが推奨されます。
2. 電子証明書の取得
識別番号と組み合わせるための電子証明書を用意します。申請者が個人か法人かによって必要な証明書が異なります。
- 個人または企業内個人の場合:マイナンバーカード(個人番号カード)が利用可能です。その他、特許庁が指定する認証局の電子証明書(セコムトラストシステムズ株式会社のセコムパスポート for-G-ID、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社のDIACERTサービス カテゴリA、カテゴリBなど)も使用できます。
- 法人の場合:法務省電子認証登記所が発行する「商業登記電子証明書」を取得してください。この証明書は証明期間ごとに発行手数料がかかり、例えば証明期間が3か月の場合は1,100円が必要です。
3. ICカードリーダーの用意
用意した電子証明書がカードタイプである場合、パソコンに接続するICカードリーダーとそのドライバーのインストールが必要です。
- マイナンバーカードを使用する場合は、市販の対応ICカードリーダーを用意します。なお、MacのWindows仮想空間を利用している場合、仮想空間上でカードを認識しないリーダーが多いため、動作状況に注意してください。
- 商業登記電子証明書のカードタイプを使用する場合は、日本電子認証株式会社の「ICカードスタートキット」が必要です。
4. 支払手段の準備
特許庁へ支払う手数料や登録料の決済手段として、予納、現金納付、クレジットカード納付、電子現金納付、口座振替などの中から、都合のよい方法をあらかじめ用意しておきます。
識別番号の取得と登録の具体的な手順
パソコン環境と電子証明書が整ったら、電子出願ソフトを導入し、識別番号の取得と登録を進めます。特許庁が運営する「電子出願ソフトサポートサイト(https://www.pcinfo.jpo.go.jp)」へアクセスし、以下の流れに沿って行います。
電子出願ソフトの入手とインストール
- 検索エンジンで「電子出願ソフトサポートサイト」と検索するか、直接「https://www.pcinfo.jpo.go.jp」にアクセスします。
- サイト上部の「はじめての方へ」をクリックし、必要に応じて「個人の方へ」または「法人の方へ」を選択します。
- 画面に表示されるフローに従い、電子出願ソフトのダウンロード請求を行います。氏名やメールアドレスを登録すると、インストーラーのダウンロードURLが記載されたメールが特許庁から届きます。
- 受信したメールの指示に従ってインストーラーをダウンロードし、起動してソフトをインストールします。この際、ICカードリーダーのソフトウェアなど、必要な関連ソフトが不足している場合はエラー画面で指摘されるため、その指示に従って不足ソフトもインストールしてください。
識別番号の新規取得と登録(ICカード形式の場合)
電子出願ソフトをインストールした後、識別番号を新しく取得すると同時に、電子証明書との組み合わせを特許庁に登録します。すでに識別番号を持っていて、新しいパソコンに設定し直す場合も同様のプロセスを行います。
- インストールした「電子出願ソフト」を起動します。
- 画面に本人認証画面が表示されたら、右下にある「設定」と書かれた歯車ボタンをクリックします。
- メニューの中から[申請人情報・証明書管理ツール]をクリックします。
- 次に表示される「証明書モード確認」画面で、〔ICカード〕をクリックします。
ICカード形式でのこの先の具体的な入力手順や、電子証明書がファイル形式である場合の取得・登録手順については、特許庁の最新の案内を確認してください。識別番号と電子証明書の登録(申請人利用登録)が完了すると、インターネットを通じたオンライン申請が可能になります。
よくある質問
Q. 識別番号の取得や、電子出願ソフトの利用に費用はかかりますか?
電子申請の利用料や、電子出願ソフト自体のインストール、アップデート、および識別番号の取得にかかる利用料はすべて無料です。ただし、電子署名に用いる電子証明書の取得・維持費用(商業登記電子証明書の場合、3か月で1,100円など)や、必要となるICカードリーダーの購入費用などは自己負担となります。
Q. 電子出願ソフトでの申請は、何時でも行うことができますか?
電子申請は、定期メンテナンス時間を除く24時間、日本国内からインターネットを通じて送信することが可能です。ただし、メンテナンス時間として「日曜日の午前0時から9時まで」は送信ができません。また、クレジットカードによる納付手続きを行う場合は、決済システムのメンテナンス時間である「土曜日の23時から日曜日の午前9時まで」は利用できません。最新の稼働時間やメンテナンス情報については、特許庁の最新の案内を確認してください。
Q. 識別番号の登録がうまくいかない場合、どこに相談すればよいですか?
特許庁では、電子申請に関するサポートセンターを開設しています。インターネット出願ソフトの環境設定、操作方法、仕様、障害などの問い合わせに対応していますので、識別番号の登録やソフトの操作で不明な点が生じた場合は、サポートセンターへの相談を検討してください。また、手続きや様式は日々アップデートされますので、最新の取扱状況については特許庁の最新の案内を確認してください。
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