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先使用権の確保

企業が発明やノウハウを特許出願せず、営業秘密として管理している場合、後れて競合他社が同一の発明を独自に行い、特許権を取得することがあります。その際、形式的には他社の特許権侵害となるおそれがありますが、特許法上の「先使用権」制度を利用することで、一定の範囲でその発明を引き続き実施できる可能性があります。先使用権を確保するためには、他者が特許出願をする日前に、その発明を日本国内で実施していたこと、又は実施の準備をしていたことを証明できるようにしておくことが重要です。

証拠価値を高める3つのタイミング

営業秘密について先使用権を主張できるようにするためには、営業秘密が存在していた日時を証明できるようにしておくことが望ましいです。具体的には、以下の3つの段階において、継続的にタイムスタンプを取得する運用を行います。

  • ①その営業秘密が作成された段階:開発におけるラボノートや日報、それに添付される実験データ、図面などが作成された段階。
  • ②会社の強みとして実施することを計画又は承認した段階:取締役会、経営会議、又はそれ以下の階層における会議の議事録等において、その営業秘密に係る内容を実施することが計画又は承認された段階。また、その営業秘密に係る構成の制作を外注した際の仕様書なども該当する。
  • ③会社の強みとして実施した段階:その営業秘密を実際に運用している様子、運用に関する社内通達、運用していることがわかるマニュアルなどが存在する段階。

タイムスタンプを取得する方法としては、専用のソフトウェアやサービスを利用する方法があります。一定の販管費は発生しますが、重要な営業秘密についてはタイムスタンプサービスを導入することが望ましいと考えられます。

簡易的な日時の立証方法に関する留意点

日時を証明すべき情報が少なく、販管費をかけずにデータが存在した日をある程度立証したい場合の簡易的な運用として、自身で使用できるGmailアカウントを2つ用意し、日付を証明したいデータをメールに添付して、一方のアカウントから他方のアカウントへ送信する方法が考えられます。外部サーバを経由した日時を確認できる場合があり、日時の偽造が相対的に困難であるため、データが存在していたと主張できる可能性があります。

ただし、この簡易的な方法は主流の方法ではなく万全な方法でもないため、利用する場合には自身の判断で慎重に行う必要があります。なお、Gmailアカウントを1つだけ用意し、自分自身の同一メールアドレス宛に送信する方法は、外部サーバを経由しないため日時の客観性が弱くなるおそれがあるため避けるべきです。

よくある質問

Q. 特許出願をせずに営業秘密として管理する場合、どのようなデメリットがありますか?

A. 自社が発明を行い特許出願をせず営業秘密として管理していた場合でも、後れて競合他社が同一の発明を独自に行い、特許出願をして特許権として登録されることがあります。その場合、自社が従前からその発明を実施していたとしても、形式的には後れて登録された他社の特許権の侵害にあたる可能性が生じ、自社の強みを従前どおり発揮できなくなるおそれがあります。

Q. タイムスタンプはどのようなタイミングで取得すべきですか?

A. ①その営業秘密が作成された段階、②会社の強みとして実施することを計画又は承認した段階、③会社の強みとして実施した段階の3つのタイミングにおいて、それぞれタイムスタンプを取得する運用が望ましいとされています。

Q. 先上権や手続きの詳細について疑問がある場合はどうすればよいですか?

A. 断定できないことや個別の状況については、特許庁の最新の案内を確認してください。

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